
前回の記事では、Excelを使った業務データの「見た目重視」から脱却し、縦軸・横軸の考え方が
データ活用に大きく影響することをお伝えしました。
▼ 前回記事
[Excel編集の極意「縦軸、横軸の違いが次の処理に大きく影響する」]
今回はシリーズ第2回として、実際の対応策である「テンプレート」や「変換ツール」の具体例を
ご紹介しながら、現場のExcelファイルをどう有効活用するかについて掘り下げていきます。
なぜ「テンプレート」と「変換ツール」が必要なのか?
Excelファイルは、現場ごとにフォーマットが異なり、独自のルールで作られていることが多いため、
以下のような課題が発生しがちです。
• 同じ内容でも、人によって列の順序や項目名が違う
• 見やすくするために結合セルや色分けを多用していて、データ処理に不向き
• 月単位・支店単位などでファイルやシートが分割され、集計が煩雑
つまり、「蓄積されたExcel資産をそのままでは活かしにくい」状況になっているのです。
この課題を解決する鍵が、テンプレートの標準化と自動変換ツールの活用です。
実例①:業務用テンプレート(縦持ち形式)
まずは、「最初から分析しやすい形でデータを入力してもらう」ためのテンプレートです。
勤怠記録テンプレート(縦持ち版)
社員名 | 日付 | 出勤区分 | 備考 |
---|---|---|---|
山田 | 2025/6/1 | 出勤 | |
山田 | 2025/6/2 | 出張 | 大阪支社 |
山田 | 2025/6/3 | 休暇 | 年休 |
特徴:
• そのままピボットテーブルやPower BIに渡せる形式
• 他システムとの連携も容易
• 入力ガイドを付けることで、現場にも優しい設計
これにより、集計や分析処理の工数が大幅に削減され、属人化の予防にも繋がります。
実例②:変換ツール(横 → 縦形式)
既に横持ちで蓄積されているExcelデータを、「縦持ち形式に変換」するツールや仕組みも整えておく
ことで、これまでの資産を無駄にせず活かせます。
変換手法の例
- Power Query(Excel標準機能)
• 「列を行に変換」「非表示の列を除外」など、GUIで直感的に設定可能
• 更新ボタン一つで最新データへ即反映 - VBAマクロ(社内向け)
• カスタマイズ性が高く、特定フォーマットに合わせて変換処理が可能
• スケジューラで定期実行も可能に - ノーコード変換ツールの導入
• RPAや外部クラウドサービスとの連携で、自動変換 → 自動格納まで自動化
導入ステップ:現場が混乱しない進め方
テンプレートやツールをただ導入するだけでは、うまく活用されないこともあります。
以下のようなステップで進めると、現場での定着がスムーズです。
1. 現行フォーマットの棚卸し
→ どのような形式のExcelが存在しているかを確認
2. 変換の優先順位付け
→ 頻度・活用度の高いファイルから縦持ち化へ
3. テンプレートの展開と周知
→ 具体例を用いた社内説明会を開催
4. 変換ツールの提供+ヘルプデスク体制
→ 操作ミス・入力ルールへの不安を払拭
おわりに:Excel資産は「捨てる」のではなく「整える」
今あるExcelファイルの多くは、現場の努力と工夫の結晶です。
それを無理に捨てたり新システムに一気に置き換えたりするのではなく、
✅ “分析可能な形”に整え直すこと
✅ “再利用可能な仕組み”を導入すること
が、これからの業務効率化・デジタル活用の第一歩です。
次回は、「部門間でバラバラなExcelフォーマットをどう標準化するか?」をテーマにお届けします。
複数部署で異なる様式が使われている現状を、どのように整理・統一していくか?
現場を混乱させずに進めるための“現実的なプロセス”をお話しします。