「忙しいのがつらい」と感じる瞬間、誰にでもあります。

しかし実は、“忙しい”こと自体がストレスの原因ではありません。
本当のストレス源は
「自分でハンドリング(コントロール)できない忙しさ」にあります。

これはサラリーマン生活の中だけでなく、日常生活の中でも共通する現象です。
今回は、そんな“操縦不能な忙しさ”がなぜ人を疲弊させるのか
そしてどうすれば前向きに立ち向かえるのかを考えてみましょう。

忙しすぎると感じる方向けの「忙しいコラム」(←過去コラム)の第8弾です。

■ なぜ「自分でハンドリングできない忙しさ」はストレスなのか

私たちは、予測できない・コントロールできない状況に強い不安を感じます。
心理学的には「コントロール喪失感」と呼ばれるそうで
ストレス反応の大きな要因とされています。

たとえばサラリーマンの場合、
• 急な会議や上司からの無茶振り
• 他部署や同僚の遅れで自分の仕事が止まる
• 優先順位を決められないまま案件が山積み

こうした状況では、自分でスケジュールも判断軸も持てず、「やらされている」感が強くなります。
結果、疲労よりも“精神的な消耗”が蓄積されていくのです。

■ 同じ「忙しさ」でも、コントロールできればストレスにならない

興味深いのは、同じくらい忙しくても、自分で決めて動いているときは疲れにくいという点です。

たとえば、
• 自分で立てた企画を動かしているとき
• 趣味のイベント準備で寝不足になってもワクワクしているとき

このような「自己決定型の忙しさ」は、脳が“やりがい”や“達成感”として認識します。
つまり、「忙しさ=悪」ではなく、「操縦不能な忙しさ」こそがストレスの根源なのです。

■ 日常生活でも同じ構造

この原理は、仕事以外の生活にも当てはまります。
• 家事や育児で「常に誰かに合わせてばかり」
• 予定が家族や周囲に支配され、自分の時間がない
• SNSや通知に追われ、心が落ち着く瞬間がない

これらも、自分でハンドルを握れていない状態です。
忙しさではなく、「支配されている感覚」が疲れを倍増させるのです。

■ 前向きな対処法:「小さなハンドルを取り戻す」

完全にコントロールできる状況などありません。
ですが、次のような“部分的なハンドリング”を意識することで、ストレスは確実に軽減します。

1. 「決める時間」を持つ
 朝や週初めに、「今日(今週)は何を優先するか」を自分で決める。
 “自分が決めた”という感覚が主導権を取り戻す第一歩になります。
2. 「断る勇気」を持つ
 無理な依頼を受け続けると、どんどんハンドルを奪われます。
 できないことを伝えるのは、自己防衛でもあります。
3. 「自分の時間」を形にして確保する
 出勤前の10分読書、帰宅後の散歩など、
 自分の意志で行動できる時間を「儀式化」するのも有効です。

■ 「忙しさ」は決して悪ではない

忙しいことは、必ずしも悪ではありません。
むしろ、“自分の意思でハンドリングできる忙しさ”は、人を成長させ、満足感を与えます。

大切なのは、

「どれくらい忙しいか」ではなく、「自分でどれくらい舵を握っているか」

です。

サラリーマンとして働く日々の中でも、家庭や趣味の中でも、
ほんの少しでも自分の判断で動く余白を持つこと。
それが、ストレス社会を穏やかに乗りこなすための小さな“ハンドル”なのかもしれません。