組織の中には必ずといっていいほど「困った従業員」が存在します。

例えば、上司の指示がなければ動かない人、責任を回避する人、やる気が見えない人
常に反発してくる人、あるいは全くコミュニケーションを取ろうとしない人。

こうした従業員は、周囲の士気を下げたり、業務の停滞を招いたりするため
管理職や経営層にとって大きな悩みの種です。

しかし一方で、「困った従業員=即戦力外」と決めつけるのは早計です。
人材は育成の仕方や環境の整え方によって化けることがありますし、組織としても
「改善に取り組んだ」という実績は、その後のマネジメント資産となります。

今回は、前回整理した“困った従業員の典型パターン”に対して、どのような処方箋(対応策)が
考えられるのかを具体的に見ていきましょう。

5つの処方箋

「指示待ちタイプ」には“枠組み+裁量”を与える

指示待ち人材は「考えられない」のではなく、「考えることに慣れていない」ケースが大半です。
最初は小さなタスクに明確な指示を与え、成功体験を積ませましょう。
そのうえで、徐々に裁量を広げることで「自分で考えて動く」力を育成します。
ポイントは、成果が出たときにしっかりフィードバックを与えること。これにより
自主性が少しずつ芽生えてきます。

「自己保身タイプ」には“安心できる評価制度”を示す

自己保身に走る人は「失敗を責められる」ことを恐れています。
そのため、ミスを過度に追及する文化があると、報告を隠す・言い訳をする、といった悪循環に陥ります。

対策は、挑戦や改善のプロセスを評価する仕組みを設けること。
「失敗しても正直に共有したほうが得」と思える環境が整えば、自己保身よりも前向きな行動が生まれます。

「怠惰タイプ」には“数値と可視化”で動かす

怠惰に見える人でも、実は「何をどの程度やればよいか」が分からず動けない場合があります。
進捗や成果を数値で明示し、業務を見える化すると、本人も周囲もサボりに気づきやすくなります。

さらに、小さな努力や改善も数字で表せるようにすると、本人のやる気を刺激する効果もあります。
“見える化”はサボり防止だけでなく、成長を実感させるツールにもなるのです。

「反抗タイプ」には“意見の場”を設ける

反抗的な態度は、必ずしも「不満分子」で終わらせる必要はありません。
まずは意見を聞き取り、改善提案へと転換させることが重要です。

あえて「反対役」として議論に組み込むと、健全なディスカッションが生まれ
組織の意思決定が強固になります。反抗タイプは、裏を返せば「組織をより良くしたい」という
エネルギーを持っていることが多いのです。

「コミュニケーション拒否タイプ」には“ルール+習慣化”を徹底

報連相を避ける人がいると、チーム全体の情報伝達に大きな穴が空きます。
最低限の報告ルールを設け、朝会や週報などで習慣化することが必要です。
また、個別面談を通じて「なぜコミュニケーションを避けるのか」を探り、心理的安全性を高めることも重要。
チーム全体で「情報共有は当たり前」という文化をつくることで、個人の拒否反応を和らげやすくなります。

まとめ

困った従業員への対応を「叱責」や「排除」だけで終わらせると、問題は繰り返され
組織の成長機会も失われます。

  • 育成や仕組みで改善の余地を探る
  • 成果や行動を評価で後押しする
  • 必要に応じて役割・配置を変える

こうした取り組みを経てこそ、マネジメントは「人を活かす力」を磨くことができます。

もちろん、改善の努力をしても変わらない人も存在します。
その場合には、配置転換や最終的な雇用調整も現実的な選択肢です。

最も重要なのは、「困った従業員」に振り回されて消耗するのではなく
組織全体を成果に導く視点を持つこと。
マネジメントの役割は、個人の問題に埋没することではなく、チームを前進させることなのです。