はじめに:その作業、本当に安全ですか?

毎日のように繰り返している作業。
「今まで事故なんてなかったし、大丈夫だろう」
そう思っている現場でも、ふとした油断が大きな事故につながることがあります。

リスクアセスメントとは、そうした “まだ起きていないリスク”に先回りして気づくための手法です。
単に「危険に気をつけましょう」と言うのではなく、危険を具体的に洗い出し、見える化し、対策する
という一連の流れが特徴です。

リスクアセスメントとは何か?

リスクアセスメントは、「危険の特定」「リスクの評価」「リスクの低減措置の検討」を行う
一連のプロセスを指します。

もっと簡単に言えば…

「この作業で、どんな事故が起きそうか?」を想像して、 その危険度を見極め、事故が起きないように対策を打つ」

という取り組みです。

ポイントは「起きてから対応」ではなく、「起きる前に予防」すること。
いわば、転ばぬ先の杖なのです。

なぜ今、リスクアセスメントが求められるのか?

1. 法律で義務づけが進んでいる

日本では、2006年の労働安全衛生法の改正により、リスクアセスメントの実施が努力義務として
明記されました。さらに近年では、化学物質や作業機械に関する規制強化により、特定の業種では
義務化されるケースも増えています。

たとえば:

  • 有機溶剤や特定化学物質を使っている現場
  • プレス機、研削盤などの機械を扱う現場

では、リスクアセスメントが求められています。

2. ISO(国際基準)でも必須事項

ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)や、ISO9001(品質マネジメント)においても
リスクベースの考え方が中核になっています。

取引先や親会社から「ISO対応が必要です」と言われた企業では、リスクアセスメントの実施が
求められる場面が増えています。

3. 人材不足・高齢化による現場の「見えないリスク」増加

近年はベテランの退職が進み、経験の浅い作業者が増えています。
「慣れていない人でも安全に作業できる環境づくり」が、これまで以上に重要になってきました。

中小企業でもリスクアセスメントをやる意味とメリット

1. 小規模だからこそ「現場の声」が通る

中小企業は、大企業と違い、現場と経営の距離が近いのが強みです。
現場で気づいたリスクをそのまま改善に反映しやすく、スピード感ある対応が可能です。

2. コスト削減・業務効率にもつながる

危険を事前に把握しておけば、事故による 損害・稼働停止・作業員の欠勤といったコストを
未然に防げます。
また、「これって無駄じゃない?」という視点から、業務の見直しや効率化にもつながること
があります。

3. 働く人の安心・定着率アップ

「ちゃんと安全を考えてくれている会社だ」と従業員が感じれば、職場への信頼感も高まり
離職率の低下や採用面でのアピールにもつながります。

まとめ:「リスクに気づける組織」は強い

リスクアセスメントは、決して“お役所的な手続き”ではありません。
現場の安全・企業の信頼・従業員の安心を守る、会社の「地力」を底上げする取り組みです。

最初から完璧にやる必要はありません。
小さなところから、少しずつ始めてみる。それが第一歩です。

次回は、リスクアセスメントを実施するための「体制づくり」と「経営層の巻き込み方」について
現場で実践しやすいヒントをお届けします。