
そもそもレアアースって何?
レアアースとは「希土類」と呼ばれる17種類の金属元素の総称です。
「レア(希少)」とついていますが、実は地球上に“量が少ない”わけではありません。
問題は 「取り出しにくい・分離が難しい・加工に手間がかかる」という点にあります。
レアアースは
• スマホ
• 電気自動車(EV)
• 風力発電
• MRI
• ミサイル/レーダー
など、ハイテク産業と軍事技術の心臓部 に使われています。
「レアアースを制する者は、未来の産業を制する」と言われるほど重要な資源です。
半導体をその昔「産業の米」と表現していましたが
その例えで言うとレアアースは「産業のビタミン剤」との事です。
第1章:なぜ世界は中国に依存しているのか?
理由は大きく3つ。
① 世界最大の埋蔵・採掘量
中国はレアアースの埋蔵量こそ世界シェアの約35%程度ですが、採掘量では世界トップクラスを
長年独占し、一時期は世界生産の90%以上を占めた時期もありました。
② 圧倒的な「分離・精製」技術と設備
レアアースは「採掘 < 分離 < 精製 < 合金化 < 磁石などの最終加工」
という複雑な工程を経てやっと使えるようになります。
この 中~下流工程(精製・加工)を一貫して大量に行える国は中国のみ でした。
そのため、採掘を他国が行っても結局は中国に送って精製していたのです。
③ 低コスト・環境規制の緩さ
レアアース加工は環境汚染リスクが高く、欧米や日本では規制が非常に厳しい。
結果、規制が比較的緩かった中国に集約されたという歴史があります。
第2章:中国以外に調達先はないの?
あります。ただし “量” や “採算” や “加工能力” に課題があります。
■ 主な代替候補国
• アメリカ(カリフォルニア州マウンテンパス):採掘は復活したが加工はまだ弱い
• オーストラリア(リンアス社):比較的有力で、日本企業も出資
• ミャンマー、ベトナム、ブラジル、南アフリカ:潜在力があるが政治的リスク・技術不足も
• 日本(南鳥島周辺):後述のように世界を揺らす潜在力
つまり「中国以外にもあるが、中国の代わりをすぐ務められる国はまだ少ない」 のが現実です。
第3章:南鳥島のレアアースは“日本を変える”のか?
2018年以降の調査で、南鳥島周辺(日本EEZ内)には
数百年分の世界需要を満たす可能性がある と報じられました。
【南鳥島レアアースの強み】
• 海底に高品位のレアアース泥が広範囲に存在
• 特にEVに必須の“重希土類”が豊富
• 日本の排他的経済水域(EEZ)内で政治リスクが低い
【しかし一方で課題】
• 深海(6000m級)ゆえ、回収コストが超高い
• 大量採取の技術はまだ研究段階
• 環境影響の評価が不可欠
• そして何より…
日本には精製・分離の大規模インフラが不足している
レアアースは“掘っただけ”では意味がなく、
精製・合金化までできないと経済価値は生まれない。
つまり、南鳥島が宝の山になれるかは
「採掘+精製+加工を国内で一貫して行えるか」 が鍵です。
第4章:レアアースは「加工して初めて価値が出る」って本当?
本当です。
世界の付加価値のほとんどは
• 金属としての純度を上げる
• 合金化する
• 磁石やモーター部材として成形する
という 中下流工程 にあります。
中国が強いのはこの部分。
日本もハイエンド磁石(ネオジム磁石など)の技術は強いのですが、
原料の精製から一気通貫で大量に行う体制は未整備 です。
第5章:もし日本が「採掘+精製+磁石製造」まで一貫できたら?
これは世界の勢力図に影響を与えるレベルです。
可能性①:日本がレアアース供給国へ
世界は対中リスクを嫌っているため、
日本が安定供給国になれば一気に注目されるでしょう。
可能性②:EV・再エネ・ロボット分野で日本の競争力が復活
レアアース磁石は、電気自動車・ドローン・ロボット・航空宇宙の心臓部。
原料を自国で確保し、加工まで一貫すれば技術・価格の両面で強い優位性が生まれます。
第6章:では、実際に世界勢力図は変わるのか?
■ 現実的なシナリオ(中期)
• 中国の独占(加工工程)は弱まる
• 日本・米国・豪州で「レアアース民主化」の動きが加速
• 一国依存リスクが減り、供給網が多極化する
■ 日本が世界をリードするかは「採算性」と「環境規制」次第
南鳥島の採掘がコスト競争力を持ち、
かつ環境面での国際的理解が得られれば、
日本は“資源小国から資源大国”へ格上げ も夢ではありません。
ただし現段階では、
「実現可能性はあるが、技術・コスト面の壁はまだ高い」
という慎重な見方が主流です。
第7章:今後のレアアース需要はどうなる?
■ 需要は今後20〜30年で“爆増”がほぼ確定
主な理由:
• EVシフト
• データセンター・ロボット・AIハードウェア市場の加速
• 軍事技術の高度化
特に磁石向けのネオジム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)は
需要と価格が長期的に上昇トレンド と予測されています。
まとめ:レアアースは21世紀の「石油」。日本は新たなチャンスを迎えている
• レアアースは「量があるだけ」では不十分
• 「採掘→精製→加工」までできて初めて価値が出る
• それができる国は現状ほぼ中国
• 南鳥島の資源と日本の技術は、世界の勢力図を動かす可能性を秘めている
• 今後レアアース需要は爆発的に増加する
南鳥島を活かせるかどうかは、日本が資源大国になれるかどうかの試金石。
国の威信をかけた日本の技術と政策次第で、
“レアアースの地政学”は大きく塗り替えられるかもしれません。
