
これまでのシリーズでは、Excel業務における実務課題を取り上げ、
その整理や標準化、そして資産としての再活用についてお届けしてきました。
▼ 過去の記事をまだご覧でない方はこちらから
• 第1回:「縦軸・横軸の違いが次の処理に大きく影響する」
• 第2回:「今あるExcel資産、どう活かす? ~テンプレートと変換ツールの具体例~」
• 第3回:「部門間でバラバラなExcelフォーマットをどう標準化するか?」
今回は最終回として、あえて根本的な問いに向き合ってみます。
「もうExcelから脱却すべきなのか?」
「それとも、賢く使い続ける道を選ぶべきなのか?」
Excelを「脱却」するべき理由
「脱Excel」という言葉が登場して久しく、近年は以下のような背景から
脱却を検討する企業も増えています。
📉 脱却の主な理由
1. 属人化・ブラックボックス化
→ 特定の人にしか操作できないマクロや複雑な関数構造
2. リアルタイム性に乏しい
→ クラウド上での即時共有や更新には向かない
3. バージョン管理・同時編集が困難
→ 誰がいつどこを修正したかが分かりにくく、管理ミスの温床に
4. システム連携がしづらい
→ 他の業務システムやデータベースとの双方向連携が不便
こうした理由から、業務の基幹部分をExcelに頼りすぎるリスクが指摘され、
SaaS・Webアプリ・業務システムなどへの移行が進められています。
それでも「Excelを活用し続けるべき理由」もある
ただし、すべての現場・業務において“脱Excelが正解”というわけではありません。
むしろ多くの現場では、以下の理由でExcelを活用し続ける意義があります。
✅ 活用し続けるべき理由
1. 現場にとっての操作性・親和性が高い
→ 新たなツール導入には教育コストと時間がかかる
2. 「帳票的な表現力」が高い
→ 複雑な表の設計・印刷レイアウトなどに優れている
3. 手元で自由に加工・試行錯誤できる
→ 分析・仮説検証・報告書作成など“柔らかい仕事”に強い
4. 資産として膨大なExcelファイルが既に存在
→ 過去データの再利用・活用を無視することはできない
つまり、Excelは今も「現場に一番近い業務ツール」であり続けているのです。
結論:「脱却」か「活用」かではなく、“選択と統合”の視点へ
これからの業務においては、単に「脱Excel」か「Excel活用」かの二元論ではなく、
業務ごとに最適なツールを選び、うまく統合していくという発想が求められます。
📌 具体的な判断軸
業務内容 推奨アプローチ
・日常的な定型集計 Excel活用+自動化(Power Queryやマクロ)
・複数部門横断・同時編集 クラウドベースのSaaS(Google SheetsやNotion)
・データベース管理 専用業務システム/kintone活用
・分析・BIツールとの連携 Excelをデータソース化+Power BIなど
中長期で目指すべき姿:「Excelを孤立させない」
Excelは今後もなくなりませんし、無理になくす必要もありません。
大事なのは、Excelを他のツール・システムと“つなげていく”視点を持つことです。
• データをクラウドDBやkintoneなどと連携する
• Excelの入力値をPower AutomateやZapierで処理する
• 分析ツールを組み合わせる
• 既存のExcel資産を「テンプレート化」「変換ツール化」して再活用する
こうすることで、Excelは「閉じた業務ツール」から、「業務のハブ」へと進化します。
最後に:あなたの現場にとって、最適なのはどちらか?
脱却か、活用か。
この問いに対する“正解”は、企業・部門・業務内容によって異なります。
ただし一つ確かなのは、
Excelというツールを「使いこなす力」は、どの道を選んでも必ず役に立つということです。
シリーズを通じてお伝えしたかったこと
• Excelは「悪者」ではない。ただし、整備・設計の視点がなければ非効率になる
• テンプレート化・変換ツール・標準化により、“使えるデータ”として活かせる
• 最終的に目指すべきは、「業務にフィットする仕組み」を自分たちで設計していく力
今後も、「現場に根ざした業務改善」と「やりすぎないDX支援」をテーマに、
ブログやワークショップ形式で情報を発信してまいります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!