言わずと知れたビジネス界の怪物級ソフト「Excel」。
今や定番を通り越し、日々の業務で最も頻繁に使うツールのひとつとして
もはやなくてはならない存在です。

その一方で、長年使われてきたがゆえの課題も浮き彫りになっています。

Excel運用に潜む落とし穴

特に以下のような課題が、現場の業務改善相談でも多く聞かれます。
• 属人化:マクロや関数を駆使しすぎて、他の人がメンテナンスできない
• 見た目重視:パッと見て美しい表だが、二次利用・加工ができない
• データ量オーバー:PCやExcelの限界を超えるデータ処理

今回は、これらの中でも特に「二次活用ができないケース」について、より深く考察してみましょう。

一覧表の罠 「見やすい」は「使いやすい」とは限らない

現場でよく見られるのが、Excel上で「見た目を整えた集計表」を作るスタイルです。

例えば:

氏名 6/16/26/36/4
山田
佐藤

このような“横展開”の表は、ぱっと見で状況が把握でき、報告書や印刷物としては申し分ありません。
しかし、データ分析やシステム連携の視点から見ると、大きな問題を孕んでいます。

問題の本質:「構造化されていないデータ」

上記のような一覧表は「視覚的に整っているだけで、データとしては非構造的」です。

例えば、勤怠データや売上データをBIツール(Power BI、Tableauなど)に読み込もうとしても、
こうした横展開形式では以下の問題が起こります。
• カラム(日付)が可変なので、自動処理に向かない
• 月ごとのシート分割で、統合処理が煩雑になる
• 集計やフィルタ処理が柔軟に行えない

つまり、「見た目を整えること」を目的にした表は、その後の分析・再利用・他システムとの
連携に不向きであり、デジタル資産としての価値を持たないのです。

では、どうすれば良いのか?

正解は「縦持ちデータ(ロング形式)」への意識転換です。

例えば先ほどの表を、「縦軸形式」に変換すると以下のようになります。

氏名 日付出勤
山田 2025/6/1
山田2025/6/2
山田2025/6/3
佐藤 2025/6/1
佐藤2025/6/2
佐藤2025/6/3

この形式であれば、以下のメリットが生まれます。
• ピボットテーブルやBIツールで自由自在に集計・可視化可能
• システム連携や自動処理が容易
• 時系列データ分析に対応
• データの再利用性が格段に向上

有効な対応策とアプローチ

対応策 内容 備考

  1. データ構造設計の標準化 縦持ちフォーマットを基本形とするルールを整備 業務別テンプレートの配布が有効
  2. 教育・啓蒙 「なぜ縦持ちが良いのか」を全体に理解させる 実例を交えた社内研修が効果的
  3. 変換ツールの導入 横持ち → 縦持ち変換用のVBA・Power Queryなど 作業の自動化と属人化防止に貢献
  4. 分析・可視化のデモ BIツールなどを使い、縦持ち形式の利点を実感させる 見える化の成功体験が行動変容を促す

まとめ:Excelは使い方次第で「資産」にも「負債」にもなる

Excelは非常に柔軟なツールであり、活用次第で業務効率を大きく高めることができます。

しかし、「見た目優先」のクセが抜けないままデータを扱うと、次の処理・分析・連携で壁に
ぶつかることが多々あります。
特にDX化が進む今、「データは再利用前提で設計する」という視点が欠かせません。

「縦軸と横軸の違い」こそが、その最初の分岐点なのです。

必要であれば、テンプレートや変換ツールの具体例もご紹介可能です。
現場で「今あるExcel資産をどう活かすか?」を一緒に考えていきましょう。