「やる気のある無能(積極的に間違った方向へ進める人)」がDXを混乱させ、
逆に「やる気のない有能(能力はあるが積極的に関与しない人)」が活用されていない状況は
現場でよくある問題です。

「やる気のある無能」への対処と、「やる気のない有能」の活用方法 の両面から施策を考えます。

言葉は乱暴ではありますが、ここで言う「やる気のある無能とは」

熱意はあるが適切な知識や判断力が欠け、誤った方向へ全力で進み周囲に悪影響を与える人。
DXでは無計画な施策で現場を混乱させ、効率を下げる要因となる。さらに、自信過剰でアドバイスを
受け入れにくく、現場のモチベーション低下を招くことも多い。

1. 「やる気のある無能」による混乱を防ぐ

施策①:DXのルールを明確にし、勝手な暴走を防ぐ

問題点:
✔ 「やる気のある無能」が「DXを進めることが目的」となり、場当たり的な施策を乱発する
✔ 目的を理解せず、新しいツールを無秩序に導入し、現場の混乱を招く

具体策:DX施策の「決定フロー」を作り、個人の独断を防ぐ

  • 例:「新しいツールを導入する場合は、事前に全員で検討」
  • 例:「実験的な導入は、まず小規模で試してから拡大」 「DXの目的」を明文化し
    「ツール導入=DXではない」ことを周知
  • 例:「業務の効率化・標準化を目的とし、手段は慎重に選定」
    「システムを入れることが目的ではない」と明確に伝える 「やる気のある無能」に影響されないよう
    重要な決定は「有能な人」の承認を必要とする
  • 「○○さん(有能な人)のOKが出るまでは本格導入しない」など、一定のチェック機能を持たせる

施策②:「やる気のある無能」のエネルギーを無害化する

問題点:
✔ やたらと動きたがるが、方向性がズレている
✔ 彼らを抑え込むと不満が溜まり、余計に面倒なことになる

具体策:「議事録作成」「情報収集」といった無害なタスクを担当させる

  • 「DX推進チームのサポート役」として、動きを制御するポジションを与える
    例:「最新のDXトレンドを調べて報告する」など、直接業務に影響しない仕事を振る 成果が出にくい
    「試験プロジェクト」を任せ、暴走を抑える
    例:「この部署だけで試験運用して、3ヶ月後に成果を見せてください」
  • 「やる気のある無能」に対し、 すぐに全社展開させず、限定的な試験運用をさせる 「現場の評価」
    によって、間違った方向への影響力を制限する
    例:「現場が納得しない限り導入しない」というルールを作る

2. 「やる気のない有能」を活用する

施策③:「やる気のない有能」に意思決定権を持たせる

問題点:
✔ 能力はあるが、「面倒くさい」と思って動かない
✔ 主体的に関わらないが、的確な判断を下せる人材が活用されていない

具体策:「決裁者」または「最終判断者」に据え、最小限の労力で影響力を発揮させる

  • 例:「○○さんの承認がないと、新しいツール導入はできない」
    彼らに 「短時間で判断するだけの役割」を与えることで、最小限の関与で活用する
    「フィードバックだけ求める」ポジションにする
  • 「○○さん、5分だけチェックして意見をください」
    「手を動かさせないが、判断力は活用する」 形にする

施策④:「やる気のない有能」が動きたくなる環境を作る

問題点:
✔ やる気のない有能は「意味がない」「めんどくさい」と思うと動かない
✔ 彼らが「価値がある」と感じる場面を作らないと、関与しない

具体策:「このDXでどれだけラクになるか」を数値化して伝える

  • 「○○さんが今やっている業務、DXで30%削減できますよ」
    「労力が減るならやるか」と思わせるのがポイント 「外部評価」を利用し、プライドをくすぐる
  • 「○○さんの知見がなかったら、このプロジェクト進みません」
    「この判断が社内で高く評価されています」と伝える 彼らの専門性を活かせる「スポット参画型」
    にする
  • 「週1回だけミーティングに参加して、意見を出す役割」にする
    例:「技術的な判断は○○さんにお願いするが、他の作業は不要」

施策⑤:「やる気のない有能」がやりやすい形で業務改善を進める

問題点:
✔ 「やる気のある無能」はすぐに手を動かすが、「やる気のない有能」は静観する
✔ 無理に巻き込もうとすると、逆に離れてしまう

具体策:彼らが関わるのは「意思決定」か「技術的アドバイス」のみ

  • 例:「このツールの選定に関して、○○さんの意見を聞きたい」
    現場業務には手を出させず、上流工程で関わらせる 「失敗すると面倒なことになる仕事」だけは
    任せる
  • 例:「DXの方向性を間違えると全体に影響が出るので、○○さんにだけ判断をお願いしたい」
    「リスク回避」の役割を与えると、責任感から動きやすい

まとめ:「無能を抑え、有能をうまく利用する」

  1. 「やる気のある無能」の暴走を防ぐ
     - 「決定フロー」を作り、勝手な行動を制限
     - 無害なタスクを振って、影響を最小限に抑える
  2. 「やる気のない有能」を活用する
     - 「意思決定者」にして、最小限の関与で影響力を発揮させる
     - 「面倒なことを減らす」メリットを伝え、関与させる
  3. 無理に変えようとせず、「自然と動く形」を作る
     - 「リスク回避」「承認権限」など、動かざるを得ない仕組みを作る

このアプローチなら、「やる気のある無能」による混乱を防ぎつつ
「やる気のない有能」が適切な場面で力を発揮できる環境を作れます。