これまでの記事では、ワンマン上司とうまく付き合いながらDX推進を進めるための工夫を
紹介してきました。しかし、残念ながら 「どれだけ工夫しても変わらない」 という現実に
直面することもあります。

上司が絶対に変わらない、現場は疲弊する一方──そんなとき、無理にぶつかり続けるのは
得策ではありません。むしろ、自分やチームを守るために 「距離を置く」「環境を変える」
という選択肢を考えることが大切です。

施策:「ワンマン上司の影響を受けない環境を作る」

1. 別の上司・部署をうまく利用する

「正面突破が無理なら、横から動かす」これは意外に有効です。

  • 「○○部門と連携して進めたほうが効率的かもしれません」
  • 「この件は本社のDX推進チームにも相談してみます」

👉 他部署や別の上司を巻き込むことで、ワンマン上司だけの判断軸から脱却できます。
結果として、意思決定が一人の独断に偏らず、組織全体での合意形成につなげやすくなります。

事例:

ある製造業の現場で、工場長が「紙帳票は絶対必要」と譲らずDXが進まなかったケース。
そこで担当者が品質保証部や経理部を巻き込み、「部門間でデータ共有ができない不便さ」
を組織的課題として提示しました。
結果、経営会議で「全社的な改善案件」として扱われ、工場長の影響を相対化できたのです。

2. 異動・転職も視野に入れる

どれだけ工夫しても、変わらないものは変わりません。
そんなとき、「環境を変えることも立派な戦略」 です。

  • 「長期的に自分のキャリアを考えたとき、この環境でいいのか?」
  • 「現場が前進しない組織に居続けることは、自分の成長にプラスか?」

これを冷静に見極める必要があります。

事例:

ある若手リーダーは、ワンマン社長の下で提案が全て却下され、疲弊していました。
思い切って転職した先の会社では、現場の声を吸い上げる文化が根付いており、数年で
部門長に昇進。「環境を変えることが一番の成長につながった」と振り返っています。

キャリアを守る視点を忘れない

ワンマン上司に向き合うことは、組織改革の試金石にもなります。
しかし、自分の心身やキャリアをすり減らすほどの価値はありません。

時には「守り」に入ることも戦略のひとつです。
環境を変える選択肢を持つことで、むしろ安心して日々の業務に向き合えるようになるのです。

次回予告

次回はいよいよ最終回。これまでの5つの施策を総括し、
「DX推進は技術よりも人間関係のマネジメントが要」というメッセージを改めて整理します。

現場で悩む方への処方箋として、このシリーズを締めくくります。