ワンマン上司の下でDXを進めるのは簡単ではありません。
彼らは「自分が正しい」と信じており、決定を曲げることを極端に嫌います。
しかし、一度決めたことが必ずうまくいくとは限らないのも現実です。

このとき部下が直接「だから言ったじゃないですか」と反論してしまえば、相手のプライドを傷つけ
かえって頑なに固まってしまいます。
ではどうすればよいか?──答えは 「小さな失敗」を経験させ、軌道修正の余地を作ること です。

ワンマン上司が「失敗」を認めない理由

ワンマン上司は決して「学習しない人」ではありません。
むしろ、過去の成功体験に強く縛られており、

  • 「自分の判断で会社を成長させてきた」
  • 「強いリーダー像を崩すわけにはいかない」
    という意識が背景にあります。

だからこそ、完全な失敗は絶対に認めたくないのです。
しかし「部分的な修正」なら「さらに良くするため」と言い換えて受け入れることができます。

施策③:「小さな失敗」を経験させ、軌道修正を促す

1. あえて「試させてみる」

  • 「この方法で進めますが、万一問題が起きた場合はプランBも用意しています」
  • 「まずはこの方法を試してみて、成果が出なかったら別案も検討できますね」

👉 ポイント
相手の提案を真っ向から否定せず、「まずやってみましょう」と受け入れる。
同時に**“安全装置”として別案を仕込んでおく**ことで、軌道修正の余地を確保します。

👉 事例:
ある製造現場で、部長が「在庫は紙管理のままで十分」と主張。
現場は「では紙で続けながら、同時に簡易なデジタル記録を並行運用しましょう」と提案。
数週間後、紙の記録が滞ってもデジタル側では正確なデータが残っており、結果として
「やはりデジタルの方が便利だな」と部長自ら認める流れとなりました。

2. メンツを守りつつ方向転換させる

  • 「部長のご指示通り進めた結果、追加の改善ポイントが見えてきました!」
  • 「このやり方で進めて良かったからこそ、新しい課題に気づけました」

👉 ポイント
「間違っていた」と突きつけるのではなく、「さらに良くするための発見」として伝える。
これにより、本人のプライドを保ちながら方向転換が可能になります。

👉 事例:
ある営業部では、社長の意向で「電話営業を強化」する方針に。
結果的にアポ率が下がりましたが、現場は「この取り組みのおかげで、オンライン商談の方が
効率的だと分かりました」と報告。社長は「自分の判断があったから新しい改善点が見えた」と
納得し、オンライン商談ツールの導入が加速しました。

3. 失敗を「成長ストーリー」に変える

ワンマン上司は「負け」を嫌いますが、「成長」や「進化」の物語には乗りやすいものです。
小さな失敗を「気づき」として提示すれば、本人も「自分のリーダーシップで改善が進んだ」と感じられます。

👉 事例:
品質管理の改善をめぐり、上司が「マニュアルを増やせ」と指示。
現場はマニュアル作成を実施したうえで、「実際にやってみた結果、教育効果より負担が大きいと
分かりました。ここからシステム化に移行すれば効率化できます」と報告。
結果、「マニュアル強化」という上司の方針も尊重しつつ、デジタル化へのシフトが自然に進みました。

DX推進における「失敗の翻訳者」になる

DX推進の現場で必要なのは、最新の技術知識よりも、上司の失敗を“正しく翻訳”する力です。
つまり、

  • 失敗を「否定」ではなく「発見」に変える
  • 「間違い」ではなく「進化のためのステップ」と言い換える

この工夫次第で、ワンマン上司も柔軟に変化できるようになります。

次回予告

次回は 「YESマンになりすぎないようにしながら、うまく立ち回る」 をテーマにお届けします。
上司に従うだけでは進まないDX、その中で部下がどうバランスを取るべきかを掘り下げます。