
なぜ今、現場向けガイドブックが必要なのか
第1回では、日本社会を取り巻く空気感と、外国人労働がすでに現実として進んでいる
状況を整理しました。
第2回では、「合わせてもらう」「我慢する」といった二項対立では、現場は回らない
という点を、実務視点で考えてきました。
第3回では視点を少し変え、
外国人を受け入れる側の日本人・企業担当者が、最初に整理しておきたい前提について
考えてみます。
「知っているつもり」が、いちばんのすれ違いを生む
多くの日本人担当者は、外国人に対して決して冷淡ではありません。
むしろ、
- なるべく困らせたくない
- 失礼にならないようにしたい
- 強く言い過ぎないように気をつけている
こうした配慮を自然に行っています。
しかしその一方で、
「日本では普通」「言わなくても分かるだろう」という前提が、
無意識のうちに残っていることも少なくありません。
この“知っているつもり”が、
実は最初のすれ違いを生む原因になることがあります。
日本の職場は「前提共有型」で動いている
日本の職場には、次のような特徴があります。
- 暗黙のルールが多い
- 空気や文脈を重視する
- 曖昧な表現で意図を伝える
- 「言わない=問題ない」と解釈されがち
日本人同士であれば、
長年の経験や共通認識で補完できます。
しかし外国人にとっては、
- どこまでがルールなのか
- どこからが配慮なのか
- なぜ注意されないのに評価が下がるのか
が見えにくい構造になっています。
「文化の違い」では片付かない現場の違和感
現場で起きるトラブルは、宗教や国民性といった大きな文化差よりも、
- 前提が共有されていない
- 判断基準が言語化されていない
- 期待値がすり合っていない
こうした設計不足から生じることがほとんどです。
つまり問題の多くは、
「分かり合う気持ちが足りない」のではなく、
「説明されていない」「整理されていない」ことにあります。
日本人側にも、実は負荷がかかっている
見落とされがちですが、
受け入れる側の日本人も、実はかなりの負荷を抱えています。
- どう説明すればいいか分からない
- 注意していいのか迷う
- 炎上やハラスメントを恐れて踏み込めない
- 個人の善意に任せられている
結果として、
「人によって対応が違う」
「担当者が変わると雰囲気が変わる」
という不安定な運用になりがちです。
だからこそ「個人の頑張り」にしない仕組みが必要
ここで重要なのは、
共生を担当者の人柄や経験値に委ねないことです。
- 何を伝えるべきか
- どこまで配慮するか
- どんな考え方を共有しておくか
これらを、「分かる人が頑張る」ではなく、
誰でも一定水準で扱える形に整理する必要があります。
ガイドブック制作の必然性
このような背景から、
私たちは外国人向けだけでなく、
受け入れる側の日本人向けのガイドブックが必要だと考えました。
目的は、
- 日本文化を教え込むことではありません
- 正解を示すことでもありません
- 管理を厳しくすることでもありません
現場で起きがちな誤解を減らし、日本人側・外国人側の双方が、
「なぜそう感じるのか」を整理するための共通言語を作ることです。
次回予告
次回は、このガイドブックでどんな内容を扱うのか、
そしてなぜ「総務・現場担当向け」に焦点を当てたのかを、
もう少し具体的に紹介します。
共生は理想論ではなく、現場を回すための実務の話です。
そのためのツールとして、どのような考え方・構成でガイドブックを作ろうとしているのか。
第4回では、その全体像をお伝えします。
