多くのお客様を通じて、様々なITサポートを行わせていただいております。
そんな中で複数社さまの共通事項であります改善内容のにつきまして共有致します。

コトの経緯

ある中堅製造業さまの担当よりご相談
製造物の客先配送を自社運送or運送会社さまで実施しておりますが
お客様毎に配送運賃や配送物が違うためにこの振分(請求処理)を人海戦術で行っている。
これをシステム化して効率化出来ないか?

この様なご相談です、早速、訪問して詳細内容を確認。
担当者からお話を伺うと、日々 結構な規模(客数)に配送を行っており
その集計には、Excel対応表(客先運賃単価表)を確認しながら、荷物量と併せて
集計を行い、運賃伝票類を発行しているとの事。

その量たるや、人の確認域を超えており優秀な女性社員がこまめなチェックを行いながら
伝票作成(集計)をしております。
そこはまさに職人芸で完全なる属人化の世界です。

ここに危機感を持った上司が困り果ててのご相談でございました。

折角なので、ブログを見ているみなさんもケーススタディとして一緒に考えましょう。
……シンキングタイム………

それでは答え合わせです。
業務内容を整理して2種類の方法で考えます。
案①選択条件を整理してプログラム化(振分)を行い伝票の自動出力を実施
案②根本原因を追求(深堀)してDX変革を行う

さてどちらで進むのが最適でしょう、解説してみます。

案①、この内容はデジタイゼーション(単なるデジタル置換)の範囲です。
振分け条件をプログラミングして処理を自動化する内容です。
多くの場合はこの方法を取ると思います……が実は落とし穴があります。

一時的にはシステム屋が仕組み化する事は可能ですが
・配送先のお客様数が3桁数に達しており、条件が複雑な作り込みが必要
・変更項目が多いので外部依存が続きそう

以上の様な内容で、システム提案側としてもあまり推奨出来る環境ではありません。
そこでもう少し仕組みからの改革や改善が出来ないかヒアリングを重ねて深堀してみます。

その中で見えて来た内容
・運送費には社内で決まった定義は無く、営業がお客様との合意で決めている
→これは昔からの慣習で過去実績などからそれぞれが判断している

ここからがDX絡みの変革ポイント(アイディア)になります。

  • 昔からの慣習…客数が数十社単位の昔であれば良かったですが、企業規模も大きくなり
    人海戦術では難しくなって来た。
  • 会社としての運賃算出規定も無く、営業担当の裁量で決めている
  • 燃料費高騰にも関わらず、個別対応のために価格転嫁が出来ない

DX提案内容「社内で運賃規定を定めましょう」

この提案を行った所、所轄の担当管理職は「うちの部署だけの判断では出来ない」
とのネガティブなご意見です。いままであれば当然の内容です。

社内関係者&経営層を交えての提案事項に発展。

現状の問題点(複雑な仕組み、燃料費高騰に未対応でマイナス)この辺の状況をまとめて
経営会議内で協議していただく

方向性は概ね良好…しかし全てのお客様との調整はどうするのか?
この辺が中々進まない内容になります。

打開案
先ずは社内でしっかりした、運賃定義を明確に文書化します。
要はお客様毎の運賃では無く、荷物内容に関わらず「量と距離」での算出方法に決定
※個人的には「量」は不要と考えます、量が増えようが一回で運ぶ場合には人件費、車両台、燃料費は
同じなのだから「距離」だけで良いはずですが……ここは妥協

その次の「お客様調整」になります。
この部分は部署の一担当のお仕事ではありません、営業担当でも難しいです。
会社のトップのお仕事になります(または部長職以上)
「運送費の見直し」と題した通達連絡文を発行して対応してもらいます。
当初は軋轢も生むかもしれませんが、ここは絶対にやり切る経営的覚悟が必要です。

最初は一部署の事務作業の人海戦術問題が発端でしたが、部分最適では無く
根本(根幹)部分に議論を進めて行くことで、全社の問題として対応が出来ました。

後日談ですが、ほとんどのお客様は了承していただきましたが
数十%のお客様は難航を示し、以前の方法が残ってしまいました。
しかしながら、約7,8割(取引の多い所含む)が了承してくれた事により
先のシステム化が外部依存のシステム開発では無く、ノーコードアプリでの対応が可能になり
自社内でのメンテナンスも可能になり結果的に合理化に進みました。

そして何よりのメリットは、運送費算出を一律化した事により営業の判断が楽になり
燃料費の乱高下に対しての一律料金改定などが可能になった事は大きな進化です。

先ずは一部署の事務員による人海戦術での運賃精算作業が全社を動かして
改革できた事は「DXの最高の事例」と言っても過言では無いと思います。

これらの事例は、たまたま上司や経営層も課題を共通認識として
一緒に動いてくれた事がDXに進んだ成果になります。
「レッツDX」