
はじめに:「リスク管理?ウチは人手も少ないし…」
リスクアセスメントを始めようとしても、
- 「そんな専任チームを作る余裕はない」
- 「社長に言っても“面倒なことやるな”で終わりそう」
…そんな声をよく聞きます。
特に中小製造業では、人手不足・多能工体制・現場優先の実情があり、制度や仕組みだけを
導入しても空回りしがちです。
だからこそ大切なのは、“大がかりなもの”としてではなく、日常業務の延長として始められる
仕組みづくり。
本記事では、「小さなスタートでも実現できる体制の作り方」と「経営層の巻き込み方」に
フォーカスします。
1. まずは“誰がやるか”を決めよう:責任者と推進チームの設置
リスクアセスメントを定着させるには、担当を明確にすることが第一歩です。
「安全衛生委員会」「品質管理担当者」「現場リーダー」など、既存の役割をうまく組み合わせて
推進体制をつくるとスムーズです。
■ スタート時の体制づくりのヒント
役割 | 内容 | 人選のポイント |
---|---|---|
責任者(リーダー) | 推進の旗振り役。上層部との橋渡しも担う | 総務部長、安全担当、工場長など |
実務メンバー | 現場のリスク洗い出しや対策の検討 | 現場リーダー、設備担当者など |
サポート役 | 事務作業・記録・文書整備 | 総務・庶務などデスク業務の担当者 |
※人選は「社内で信用がある人」かつ「日常的に現場を見ている人」がおすすめです。
「○○さんがやってるなら、ちょっと協力しようか」と、周囲が動きやすい雰囲気づくり
にもつながります。
2. 経営層を巻き込むには「数字」と「共感」がカギ
「リスクアセスメントを始めたいんですが…」と突然提案しても、
「うちは事故なんて起きてないし、他に優先すべきことがある」と返されてしまうケースは
少なくありません。
そこで大切なのは、「なぜ必要なのか?」を経営目線に翻訳して伝えることです。
■ 経営者に響きやすい3つの切り口
- リスク=コストであることを示す
→ 労災1件で数百万円以上の損害が出るケースも。万一の事故が経営に与える影響を数値化して提示。 - 取引先対応・ISO対応の一環としての必要性を伝える
→ 近年は大手や親会社から「リスク管理の取り組み状況」を問われる場面が増加。 - “社員を守る姿勢”が、採用・定着にもつながる
→「安全を大切にする会社」としての企業イメージ向上、若手採用にも効果あり。
数字+共感。この2つを押さえることで、経営層から「やる意味があるな」と認識してもらいやすくなります。
3. 小さく始めて、少しずつ広げる
「いきなり全体でやろう!」とすると、負担感が強くなりがちです。
まずは、1ライン・1工程・1チームから小さく始めてみるのが現実的です。
■ 小さなスタートの例
- 月1回、安全チェックの際に1つだけリスクを洗い出す
- 朝礼や終礼で5分だけ「ヒヤリハット」を共有
- 休憩所に「危なかったことメモボード」を設置して、自由に書いてもらう
こうした小さなアクションが、「みんなで安全をつくる」という空気を育てていきます。
まとめ:リスクアセスメントは「仕組み」より「習慣」
リスクアセスメントの目的は、“資料をつくること”ではなく、事故を防ぎ、安心して働ける
環境を作ることです。だからこそ、組織体制も立派なものにしようとしなくて大丈夫。
・できる人が
・できる範囲で
・無理なく続けられる形で
まずは一歩を踏み出すことが、組織を変える原動力になります。
次回は「従業員を巻き込むにはどうしたらいいか?」をテーマに、
実践的な教育・トレーニングの手法や、現場で“他人事”にさせない仕掛けづくりを紹介します。