
製造現場では、製造指示・部材手配・工程進捗・品質・在庫・納期など、日々膨大な情報が動きます。
それらを適切に管理し、効率的な生産活動を支えるために不可欠なのが 生産管理システム です。
この記事では、生産管理システムの「全体像」を体系的に整理し、これから学び直す方でもイメージ
できるように解説します。
シリーズ化の第1弾として、生産管理システムの構造と役割を俯瞰して理解することが目的です。
■ 1. 生産管理システムとは何か
生産管理システムとは、製造業において 製造(生産)・販売・在庫(製販在) を管理
するための情報システムを指します。
特に本記事では、広義の※SCM(サプライチェーンマネジメント)を含まない
製造現場中心の「狭義の生産管理」について扱います。
※サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、原材料の調達から製造、物流、販売、顧客への配送に
至るまでの一連のプロセス(サプライチェーン)全体を、情報共有と連携によって効率的・最適に
管理する経営手法です。
● 製販在とは?
領域 主な役割
製造 生産計画・手配・工程進捗・現場実績などの管理
販売 見積・受注・納品・請求・売掛管理など
在庫 材料・仕掛・製品の数量・棚卸しの管理
このシリーズでは、「販売管理」は範囲外とし、製造管理(生産管理)と在庫管理にフォーカスします。
■ 2. 生産管理システムの構造(3つの柱)
生産管理の役割は大きく以下の 3 つに分類できます。
① マスター管理(基礎情報管理)
製造管理のベースとなる基礎データ(マスター)を管理します。
主なマスターデータ
• BOM(部品表):部品と製品構成を定義するリスト
• 製品マスター:製品コード・仕様・単位など
• 部品/原材料マスター
• 工程マスター:工程順序・工数・設備情報
• 作業者マスター:作業者スキルなど
• 取引先マスター(購買先)
マスターの正確性は生産管理の「生命線」であり、生産計画や手配の全ての基礎になります。
② 物流・進捗管理(生産管理の中核)
工場内の「モノと情報の流れ」を管理する領域です。
主な仕組み
• 生産計画(需要に基づく生産量・日程の決定)
• 手配管理(材料手配・外注手配)
• 工程管理(作業指示、進捗管理)
• 実績収集(作業時間、出来高、不良、ロス)
• 在庫消費と入出庫連動
入荷 → 生産 → 出荷 の一連の流れを管理し、
「今、どの工程がどうなっているのか?」を可視化する仕組みです。
③ 品質管理(Quality Control)
品質維持と改善のための情報管理を行います。
主な機能
• 日常の品質記録(寸法測定、合否判定)
• 不良情報管理(異常点の記録、原因分析)
• 検査工程の進捗管理
• トレーサビリティ(材料ロットと製品の紐づけ)
品質管理は、工程の安定化、再発防止、生産性向上の基盤となります。
■ 3. 生産管理システムの役割と価値
生産管理システムは単なる帳票作成ソフトではなく、工場の 計画 → 実行 → 実績 → 改善 の
一連のサイクルを支える重要な基盤です。
● 生産管理システムがもたらすメリット
• 納期遵守の向上
• 在庫の適正化(過剰在庫・欠品の防止)
• 作業効率の向上
• 原価把握の精度改善
• 工程の見える化による生産性向上
• 品質問題の早期発見と改善
■ 4. 生産管理と在庫管理の関係
生産管理と在庫管理は密接に結びついています。
在庫データが狂えば、計画も手配も正しく動きません。
● 在庫管理が担う領域
• 原材料在庫
• 仕掛在庫(WIP:Work In Process)
• 製品在庫
• 棚卸し管理(実地棚卸 → システム在庫の修正)
生産管理システムでは、工程実績と在庫が連動することが最大のポイントです。
例:
• 材料を消費 → 材料在庫が減少
• 工程完了 → 次工程仕掛が増加
• 完成 → 製品在庫へ振替
この連動により、正確な原価計算や計画精度の向上が可能になります。
■ 5. 生産管理システム全体像まとめ
これまでの内容を図式化すると以下のようになります。
【生産管理システムの全体像】
┌─────────────┐
│ マスター管理
│(製品・部品・BOM等)
└─────────────┘
↓
┌─────────────┐
│ 物流・進捗(生産)管理
│(計画・手配・工程管理)
└─────────────┘
↓
┌─────────────┐
│ 品質管理
│(検査・不良・日報)
└─────────────┘
↓
┌─────────────┐
│ 在庫管理
│(材料・仕掛・製品)
└─────────────┘
この一連の流れが、工場の生産活動をデジタルで支えています。
■ 6. 今後のシリーズ構成
本シリーズは以下の流れで展開します。
第1弾(今回)
▶ 生産管理システムの全体像
生産管理とは何か?
どのような要素で構成されているか?を整理。
第2弾:製造管理(物流・進捗・品質)の詳細解説
• 生産計画・手配の仕組み
• 工程管理のポイント
• 実績収集の考え方
• 品質管理の役割と情報流れ
• BOMと工順構造の関係
第3弾:汎用的な生産管理システムを導入した場合の運用と利活用
• 業務フローの設計
• マスタ整備の進め方
• 運用定着のポイント
• データ活用・分析(原価・稼働率・工程改善など)
