
投資は「始め方」だけでなく「終わらせ方」が大切
計画的に資産を使い、人生の選択肢を広げるために、売却・利益確定・取り崩し・相続/贈与までを
一気通貫で学びます。今日からマネできる行動ルールまで落とし込みます。
前提をそろえる(ここが“出口の設計図”)
- 生活防衛資金:生活費の6〜12か月分は現金・普通預金で確保(取り崩しと切り分ける)
- 口座の区分:NISA(非課税)/特定口座(課税・源泉徴収あり推奨)を把握
- キャッシュフロー表:年単位で「入ってくるお金(年金・給与・配当)」と「出ていくお金(生活費・教育・住宅・医療)」を並べる
- インフレ前提:目標額は実質(インフレ調整後)で考える。長期は毎年+2%でざっくり想定が無難
投資のゴールを決める(“出口の座標”)
SMARTに数値化します。
• 目的:老後生活費/教育費/住宅頭金/セミリタイア補填 など
• 金額:例)年間240万円(月20万円)を30年間
• 開始時期:例)65歳から
• 許容変動:年間取り崩し額が±10%までならOK、など
• 資産の残し方:最後に1,000万円は残す/使い切る、のどちらかを明記
例:65歳から95歳までの30年間、年240万円を実質ベースで確保。最終残高は最低1,000万円を目標。
利益確定のタイミング(“感情”ではなく“ルール”)
2-1. リバランスで“自動利確”
• 目標配分から±5%ptズレたら、超えた資産を一部売って不足資産を買う
• 年1回(誕生月など固定)+“大きくズレた時”のハイブリッド
2-2. 価格目標・帯域(バンド)で利確
• 購入時比+20〜30%で1/3だけ売る(全部は売らない)
• トレール・ルール:高値から-15%下落で1/4だけ売る等、機械的に
2-3. キャッシュ・リザーブで揺らがない
• 1.5〜2年分の取り崩し額を“現金+超短期債”にプール
• 暴落時もこのバケツから支出→安値売り回避
取り崩しの計画(“いくら・どう減らすか”)
3-1. 代表的メソッド
メソッド 中身 向き/不向き
定額 毎月/年に一定額(例:月20万円) 収支が読みやすい/インフレに弱い
定率 年初残高の3–4%など インフレ適応しやすい/年ごと変動
ガードレール 基準額から±10%は許容、超えたら増減 使いすぎ・使わなすぎの抑制に◎
例:3,000万円の資産で3.5%取り崩し=年105万円(月8.75万円)。
翌年は残高に対して同じ3.5%を再計算(定率)。
3-2. どれから売る?(売却の順番)
1. 課税口座の評価益の小さい/期待リターンの低い資産
2. 分配金・利息が非効率な商品(税コスト高)
3. NISAは温存(非課税のため最後まで成長させるのが基本)
• ※新NISAは売却で生涯枠を翌年以降再利用可/ただし年360万円の上限は別枠。
再投資計画とセットで判断。
税制の観点(日本向けの“もったいない”防止)
• NISA:売却益・配当が非課税。基本は先に売らない方針
• 特定口座(源泉あり):原則自動で税計算。損益通算や3年繰越控除は確定申告で活用可
• 配当:総合課税/申告分離の選択で税率が変わるケースあり(高所得者は要注意)
• 税ロット:売却ロット(どの取得分を売るか)は証券会社設定を確認(平均/個別指定など)。記録を残す
ここは個別性が強い領域。“税金のために持つ/売る”ではなく、“目的のために最適化”を基本に。
迷ったら税理士へ。
相続や贈与の視点(“次の所有者”まで設計)
• 年間110万円の贈与非課税枠の活用(計画的に移転)
• 教育資金・住宅資金の特例の有無を確認
• 受取人指定(保険等)・遺言/遺言代用信託で紛争予防
• NISAの相続:非課税は死亡で終了。相続後は課税口座扱いに
• 情報の見える化:口座一覧・パスワード保管(デジタル遺言の整備)
よくあるNG行動(部活で“反復練習”)
• 暴落で一括売却/高値で一括買い…→リバランスとバケツで回避
• 税金が惜しくて売れない…→税は成功の証。ルール通りに利確
• 取り崩し額の固定化(インフレ無視)…→定率 or ガードレールへ移行
• NISAを短期売買…→長期で恩恵最大化。基本は保有継続
• 一つの証券会社・一つの名義に集中…→分散(運用も手続きも楽)
年間運用ルーティン(“迷わない仕組み化”)
• 毎月:支出は短期バケツから。相場は見ても無視してOK
• 四半期:目標配分からのズレ確認(±5%ptで調整)
• 年1回:キャッシュフロー表更新/必要額再計算/取り崩し率見直し
• イベント時:退職・相続・教育費発生→ゴール再定義と再配分
ケーススタディ(イメージしやすく)
Aさん(60歳・退職直前)
• 目標:65–95歳、実質年240万円取り崩し、最終1,000万円残し
• 設計:短期(現金・短期債)480万円=2年分、中期1,000万円、長期2,000万円
• ルール:定率3.5%+ガードレール±10%、±5%ptでリバランス
• 売却順:特定口座→評価益小→NISA温存
Bさん(45歳・10年後から学費ピーク)
• 目標:55–60歳の5年間で年150万円
• 設計:学費分は中期バケツに積上げ、株式比率は徐々に低下(目標時点3年前から債券へロールダウン)
• ルール:目標資金達成後はリスクを落として確定
今日のまとめ(行動に落とす)
• 出口は“目的金額×期間×許容変動”で数値化
• 取り崩しは“定率+ガードレール”が実務的で強い
• 税・相続は“もったいない”を避ける最低限の型を押さえる
• 迷いを“年次ルーチン”で仕組み化する
これで「投資部・基礎10回」は完走です。