~「なんとなく良くなった」から卒業しよう~

前回の記事では、「ムダを見える化する」ための観察方法や分類のコツをご紹介しました。
実際にムダが見つかり、作業の流れや動きが改善されたとき――
こんな声が現場で聞こえてきます。

「なんとなくやりやすくなった気がする」
「多分、前より早くなったと思う」

たしかに、それも立派な改善の第一歩です。
でも、「どのくらい良くなったのか?」を数字で確認できると、もっと改善が広がり説得力も増します。

今回は、「改善の効果を数字で測る」ための基本的な考え方と
誰でもできる簡単な計測方法をご紹介します。

■ なぜ「数値化」が大事なのか?

改善が「なんとなく」だと、こんな問題が起きがちです:

  • 上司や他部門に説明しても納得されにくい
  • 改善前と後で、何がどれだけ変わったのかが曖昧
  • 改善の優先順位がつけられない
  • 次の改善のヒントが見えにくい

一方、数値で記録しておけば:

  • 誰が見ても変化がわかる
  • 成果として社内に報告しやすい
  • 失敗した改善の原因も分析できる
  • PDCAが回しやすくなる

つまり、「見える化」されたムダを、「数字」で追いかけてこそ
本当の意味での“改善活動”が始まります。

■ 中小企業でも使える!改善の基本指標4つ

ここでは、難しい分析や専門ソフトがなくても実践できる
現場改善に役立つ代表的な4つの指標を紹介します。

① 労働生産性

労働生産性= 1人あたりがどれだけ価値を生んだかを測る指標

  • 計算式:
     労働生産性 = 生産数量 ÷ 人数(または人時)
  • 例:1日で100個作って、2人で作業したなら
     → 100個 ÷ 2人 = 50個/人(または人日)

小規模でも「人を増やしたのに生産数が増えていない」など、気づきを得るヒントになります。

② 稼働率

= 機械や人が実際に働いていた割合

  • 計算式:
     稼働率 = 実働時間 ÷ 所定時間 × 100(%)
  • 例:8時間勤務のうち、実際に動いていたのが6時間なら
     → 6 ÷ 8 × 100 = 75%

作業の「待ち時間」や「準備にかかった時間」が多いと、この数字が下がります。

③ サイクルタイム(作業時間)

= 1つの製品を作るのにかかる時間

  • 計測方法:
     ストップウォッチで「作業開始~完了まで」の時間を何回か計り、平均をとる
  • 例:A部品の加工に5分、6分、5分半かかった → 平均5分30秒

この数値を記録しておくと、「何秒短縮されたか」が明確にわかり、小さな改善にも成果が出せます。

④ 可動率(設備の稼働安定度)

= 設備が故障せずに安定して動いていたかを測る指標

  • 計算式:
     可動率 = 正常運転時間 ÷ 総運転時間 × 100(%)
  • 例:1日中動かしているうち、30分だけ機械が止まった
     → 可動率 =(480分-30分)÷ 480分 ×100 ≒ 93.75%

保全や点検による改善が、どれだけ安定稼働に繋がっているかの目安になります。

■ 記録は「ざっくりでOK」、でも継続が大事!

完璧にやろうとすると、続きません。
最初は「日報の余白に数字を書くだけ」「ホワイトボードにざっくり記録」でも十分です。

記録例:

日付作業者生産数稼働時間サイクルタイム備考
8/1Aさん100個6.5時間約3.9分/個レイアウト変更後、移動時間短縮

ポイントは、「改善前」と「改善後」で比較ができるようにすることです。

■ 効果が見えると、現場も楽しくなる

数字で成果が見えるようになると、現場の雰囲気も変わります。

  • 「昨日より早くできた!」
  • 「稼働率が90%を超えた!」
  • 「みんなでアイデア出して成果が出た!」

こうした小さな成功体験の積み重ねが、自走する現場改善の第一歩になります。

■ まとめ:数字は「叱るため」でなく「気づくため」に使う

指標はあくまで“評価のための道具”です。 誰かを責めたり、競争させるためのものではなく
「もっと良くするにはどうしよう?」と考えるための材料にしましょう。


次回は、もっと具体的に「小さな改善でもできるIE的アプローチ」について解説します。
現場で実践しやすく、すぐに効果が出る取り組みを紹介しますので、ぜひご期待ください!