
■ 忙しいこと自体は悪ではない
「最近、忙しい?」
この一言は、サラリーマン同士の定番あいさつのようなものです。
ですが、その“忙しさ”がどんな種類の忙しさかを考えたことはあるでしょうか。
前回の「やり損」「しがらみ」と並び、
今回のテーマは“自分でハンドリングできない忙しさ”。
同じ“忙しい”でも、
自分でハンドルを握っている忙しさは充実感に変わり、
逆に他人に握られたままの忙しさは、ストレスの温床となります。
■ ストレスの正体は「操縦不能感」
仕事の中で最もつらいのは、
「自分が頑張っても状況が変わらない」と感じる瞬間です。
たとえば、
• 急な方針転換で、昨日までの仕事が無駄になる
• 他部署の遅れで、自分のスケジュールが崩壊
• 上司や顧客の都合で、優先順位が次々と入れ替わる
このとき、心の中では
「自分の手の届かない場所で、すべてが決まっていく」
という無力感が広がります。
これがまさに“操縦不能な忙しさ”=ストレスの本質。
■ 「やり損」や「しがらみ」との共通点
前回触れた“やり損”や“しがらみ”も、根底にはこの「ハンドリング不能」があります。
• 「頑張っても評価されない」 → 成果をコントロールできないやり損
• 「断れない人間関係」 → 行動をコントロールできないしがらみ
つまり、
どれも「自分の意思で動けない状態」がストレスを生み出しているのです。
■ 日常生活にも潜む“操縦不能”
これは仕事だけの話ではありません。
• 家庭では、家族の予定に振り回される
• 友人付き合いで、気乗りしない集まりに参加する
• スマホ通知やSNSの流れに、心がずっと落ち着かない
気づけば、自分の時間を誰かに乗っ取られているような感覚。
これもまた、「自分でハンドルを握れていない」状態です。
■ 小さな“主導権”を取り戻す工夫
すべてをコントロールすることは不可能です。
しかし、一部でも自分で選び取る感覚を持てるだけで、ストレスはぐっと軽くなります。
① 優先順位を“自分で”決める
誰かに言われる前に、「今日の大事な3つ」を自分で書き出す。
自分の時間の主導権を取り戻す第一歩です。
② 「断る勇気」を持つ
受け身で忙しくなる最大の原因は“NO”が言えないこと。
「今はできません」と言えることが、実は最も大事なセルフマネジメント。
③ 自分だけの“リセットタイム”を持つ
朝の10分読書、通勤中の音楽、帰宅後の散歩。
わずかでも“自分のハンドルを握る時間”があるだけで、心のバランスは整います。
■ まちの総務的まとめ
まちの総務として日々、企業の現場を見ていると、
「忙しい」という言葉の中に、“主導権の喪失”が隠れているケースを多く感じます。
誰かの都合で、何かに追われて働く日々。
でもそれを“仕方ない”で片づけてしまうと、心のエネルギーがどんどん摩耗していきます。
大切なのは、忙しさをなくすことではなく、
“自分でハンドルを握れる忙しさ”を取り戻すこと。
自分の判断で、動き、選び、考える。
そんな小さなハンドルの積み重ねが、ストレス社会を穏やかに走るためのコツです。
■ 終わりに
「忙しいけど、なんだか楽しい」
そう思えるとき、私たちはきっと、自分で舵を握っています。
逆に「忙しいのに、なんでこんなに疲れるんだろう」と思うとき、
それは他人にハンドルを奪われているサインかもしれません。
ハンドルを取り戻す。
その感覚を忘れずにいれば、サラリーマン生活も、日常も、
もう少し軽やかに走れるはずです。
