ワンマン上司の下では、つい「YESマン」として振る舞った方が安全に思えることもあります。
しかし、完全なイエスマンになってしまうと、現場にとって不利益な決定に巻き込まれてしまい
後戻りできない状況になるリスクがあります。
一方で、真っ向から反対すれば「扱いづらい部下」とされ、排除される危険もあります。

ではどうすればいいのか。ポイントは 「必要以上に逆らわず、でも巻き込まれすぎない」 という
中間のスタンスを取ることです。

施策:「必要以上に逆らわず、でも巻き込まれすぎない」

1. いったん受け入れて、調整する

  • 「素晴らしいアイデアですね。ただ、現場で円滑に進めるために少し調整してもいいでしょうか?」
  • 「ぜひ進めたいです。実施スケジュールだけ現場に合わせて段階的に導入しても大丈夫でしょうか?」

👉 ポイント
真正面から「反対です」とは言わず、“受け入れたうえで調整する”姿勢を取ります。
これにより、上司のメンツを保ちながら現場の実情に合わせた修正が可能になります。

👉 事例:
ある物流会社で社長が「一気に全員に新システムを導入せよ」と指示。
現場は「社長のお考え通り進めます。ただ、教育負担を考慮し、まずは一部の部門から始めましょう」と提案。
結果として、全体導入を前提にしつつも“段階的導入”に切り替えられ、混乱を避けることができました。

2. YESだけど、ゆるやかに実行

  • 「この方針で進めますが、1ヶ月試して改善点を見つけましょう」
  • 「ご指示通りに進めます。ただ、リスクを減らすために小規模で試してから全体展開しましょう」

👉 ポイント
「とりあえず進める」ことで、強硬な指示を回避。
その間に問題点を洗い出し、次の改善につなげる余地を作ります。

👉 事例:
製造現場で部長が「紙帳票をすぐに全廃!」と決定。
現場は「承知しました。ただ、記録精度を担保するためにまずは1ラインで1ヶ月テストしましょう」と提案。
その結果、現場の混乱を避けつつ、「やはり全面廃止には改善が必要」という共通認識を作ることができました。

3. イエスマンでも反対派でもなく「調整役」になる

重要なのは、「YESマン」でも「反対勢力」でもない立場を確立することです。
そのためには、

  • 受け入れる姿勢は見せる(対立を避ける)
  • 実行の仕方をコントロールする(現場に不利益が及ばないよう調整)

このバランスを取り続けることで、現場と上層部の“通訳”として機能し、DX推進が着実に前へ進んでいきます。

DX推進の本質は「人間関係のハンドリング」

DXはシステムやツール導入だけでなく、組織内の心理的調整が大きな鍵を握ります。
ワンマン上司に対しても「敵」ではなく「調整対象」と捉えることで、摩擦を減らしながら変革を進められるのです。

次回予告

次回はいよいよ最終回。
テーマは 「最後の手段:距離を置く/環境を変える」 です。
どうしても変わらない上司と向き合わざるを得ないとき、キャリアと組織を守るための選択肢を掘り下げます。