
DXを進めたいと考えていても、ワンマン気質の上司や経営者に「自分の意見」として提案すると
あっさり却下されてしまうケースは珍しくありません。
ところが不思議なことに、同じ内容でも「みんながそう言っている」となれば態度が一変することがあります。
つまり、突破口は 「個人の意見」ではなく「現場の総意」として伝えること にあります。
今回はその具体的な仕掛け方を解説します。
なぜ「現場の総意」が効くのか?
ワンマン上司といえども、会社を動かしているのは社員であり、現場の声を無視し続けることはできません。
「部下1人のわがまま」には聞く耳を持たなくても、「組織全体の声」として突き付けられると
自分のリーダーシップが疑われるリスクがあるからです。
心理的に言えば、ワンマン上司は「反発は嫌うが、孤立も恐れる」存在。
だからこそ「個人」ではなく「集団の声」として届けることが有効なのです。
施策②:「現場の総意」として伝える
1. 「社内の声」をうまく可視化する
- 「現場の意見をまとめたところ、こんな課題があるようです」
- 「社員アンケートで、○○改善を求める声が7割を超えました」
このように、意見を「データ化」して提示することがポイントです。
単なる愚痴ではなく「多数の声」としてまとめることで、ワンマン上司も軽視しづらくなります。
👉 事例:
ある製造会社では「古いシステムが使いにくい」という声を集め、アンケート結果をグラフ化して
経営会議で提示。社長は「そんなに多くの社員が不便を感じているのか」と受け止め、システム刷新が
前向きに検討されました。
2. 外部の声を借りる
ワンマン上司は「部下の意見」を軽視する一方で、外部の専門家や他社事例には耳を傾けやすい傾向があります。
- 「コンサルタントから、○○の改善が急務だと指摘を受けました」
- 「業界団体の調査でも□□がトレンドになっています」
👉 事例:
ある工場ではIoT導入をめぐり社長が消極的でしたが、外部の診断士が「不良率削減の効果が見込める」
と助言。すると社長は「プロがそう言うなら」と一気に前のめりになり、導入が決定しました。
3. 小さな「合意形成」の積み重ね
いきなり大きな改革を押し通すのではなく、まずは「小さな現場改善」を現場の総意として伝え
承認を得ることも効果的です。その成功体験が積み重なれば、経営者自身が「現場の声を取り入れる
ことはプラスだ」と感じるようになります。
👉 事例:
ある工場で、作業工程の見える化を現場からの総意として提案。
小規模な取り組みでしたが成果が出たことで、次のステップとして本格的なデジタル化へつながりました。
DX推進は「人間関係の翻訳作業」
DXは技術論だけでは前に進みません。
特にワンマン上司の下では、「現場の声をどう届けるか」が最大のポイントになります。
個人で戦うのではなく、仲間の声や外部の権威を活用して「総意」として動かす。
それこそが、人間関係を乗り越えてDXを前進させるコツなのです。
次回予告
次回は 「ワンマンの失敗」を利用して、変化を促すテクニック を解説します。
真っ向から説得できない相手には、あえて「小さな失敗」を経験してもらうことも有効な方法です。
そこからどう軌道修正に導くのか、ぜひご期待ください。