コンビニ、工場、介護施設、飲食店
いまや、外国人がいなければ成り立たない現場が増えています。
数年前までは珍しかった外国人スタッフの姿が、今ではごく当たり前の光景となりました。

政府が推進する「特定技能」や「技人国」などの制度整備により
外国人が“日本で働く”という選択肢は現実的なものになりました。
しかし「働けるようになった」ことと「共に働ける社会になった」ことは
まったく別の話です。

■ 日本の特殊性:単一民族国家と島国意識

日本は長い間、島国として他文化との接触が限定され、「同質性の高い社会」を築いてきました。
その結果、秩序・協調・空気を読む文化が育まれ、国内の安定を支えてきた半面、異文化や多様性への
寛容さが育ちにくかったという側面もあります。

外国人労働者が急増する今、この“日本的価値観”と“多様性”が衝突する場面も少なくありません。
たとえば
• 仕事の進め方(曖昧な指示・根回し文化)
• 評価・報酬の不透明さ
• 生活習慣・宗教・言語の壁

これらは、制度以前に「文化の違い」が引き起こすすれ違いです。

■ 外国人から見た「働く日本」

多くの外国人労働者にとって、日本は「安全で秩序のある国」「真面目に働けば評価される国」
という好印象を持たれています。
しかし同時に、次のような声も聞かれます。

「上司の指示があいまいで、何をすればいいのかわからない」
「頑張っても昇給がない」
「生活は便利だが、孤独を感じる」

制度面では整いつつあっても、人としてのつながりや心理的安全性が十分でない現状が見えてきます。

■ 日本人から見た「共生のむずかしさ」

一方、日本人側にも戸惑いがあります。
• 「言葉が通じないと指導が難しい」
• 「文化が違ってどう接してよいかわからない」
• 「トラブルが起きたら責任は誰が取るのか」

こうした“異文化ストレス”は、悪意ではなく慣れていないだけの場合が多いのです。
長く同質社会を保ってきた日本にとって、異文化共生はまだ「学びの途中」にあります。

■ 共生社会に向けての3つの視点

① 企業ができること:「共育」の発想を持つ
「教育」ではなく「共育(ともに育つ)」という視点が重要です。
外国人を“即戦力”としてだけでなく、共に働き・成長していく仲間として迎える姿勢が求められます。
• 日本語教育や生活支援の仕組みを整える
• 異文化理解研修を社内に導入する
• “先輩実習生”をメンター役として活用する

人材確保だけでなく、人材育成と定着こそが共生の鍵です。

② 行政・地域ができること:「生活者」として支える
外国人は労働者である前に“地域の住民”です。
行政は労働政策だけでなく、教育・医療・住宅・防災など、生活面からの支援を一体化させる
必要があります。

たとえば、
• 多言語での行政窓口や防災情報の整備
• 学校での多文化共生教育
• 地域ボランティアや日本語教室の支援

これらは単なる“支援”ではなく、“地域の多様性を受け入れる準備”です。

③ 個人ができること:「ちがい」を認め合う力
共生の本質は制度でも法律でもなく、人と人との信頼にあります。
挨拶ひとつ、笑顔ひとつが、文化の壁を越える第一歩です。

職場で外国人に接するとき、「教える」「助ける」よりも、
「聞く」「尊重する」姿勢を持つこと。
それが、真の共生社会を支える土台になります。

■ 多様性を“弱み”ではなく“強み”に

かつて日本の強みは「均一性」でした。
しかしこれからの時代、“多様性を受け入れる柔軟性”こそが競争力となります。

グローバル化が進む中で、
外国人が働きやすい職場は、結果的に日本人にとっても働きやすい職場になる。
それは、生産性や創造性を高め、地域や企業の未来を明るくする“共創”の力に変わります。

■ 終わりに

労働力不足から始まった議論は、今や「社会のあり方」そのものに及んでいます。
技能実習制度、特定技能、技人国これらの制度は、単に労働力を補うための枠組みではなく、
「多様な価値観と共に生きる」ための実験場でもあります。

異なる文化や考え方が混ざり合う社会は、決して簡単ではありません。
しかし、そこにこそ“新しい日本の形”が見えてきます。