~「人がいない、ムダが多い、改善できない」現場の悩みに効く考え方~

皆さんは「IE(インダストリアル・エンジニアリング)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
製造業に携わる方の中でも、「なんだか難しそう」「大企業向けの話じゃないの?」という印象を
持っている方が多いかもしれません。

でも実はこの「IE」、人手が足りない・ムダが多い・改善が進まない――
そんな中小製造業の現場こそ取り入れるべき考え方なんです。

今回は、このIEという考え方の基本と、中小企業にこそ必要な理由を
できるだけわかりやすく解説していきます。

■ IEとは「作業のムダをなくす科学的な改善の考え方」

IE(Industrial Engineering/インダストリアル・エンジニアリング)とは、
“人や設備の動き”を科学的に見て、どうすればもっと効率よく仕事ができるかを考える手法のことです。

簡単に言うと、次のようなことを考える技術です:

  • 同じ作業をもっと早く終わらせるにはどうしたらいいか
  • 作業者がムダな動きをしていないか
  • 機械が止まっている時間が多すぎないか
  • 材料や道具の置き場所は最適か
  • 工程の順番は無駄がないか

これらを感覚ではなく、観察・計測・分析にもとづいて改善するのがIEの特徴です。

■ 中小企業が抱えるよくある悩みとIEの関係

以下のような悩み、あなたの職場でもありませんか?

  • 作業者によって生産スピードや品質にバラつきがある
  • 生産性が上がらず、いつも残業でなんとか回している
  • 改善したいけど、どこから手をつけていいかわからない
  • ベテラン頼みで、若手にうまく教えられない
  • 「なんとなく非効率」と感じているが、根拠がない

こうした課題は、IEの考え方を取り入れることで、見える化し、対策が立てられるようになります。
しかも、大げさな設備や高額なシステムは必要ありません。紙とペン、ストップウォッチと
少しの時間があれば、すぐに始められるのがIEの魅力です。

■ IEの基本は「作業研究」と「時間研究」

IEの中でも、中小企業でも取り入れやすいのが次の2つです。

◎ 作業研究

作業者の動きやモノの流れを観察し、ムダな動き・待ち時間・手戻りなどを見つけて
よりよいやり方を考える方法です。
たとえば、「部品を取りに行くのに毎回5歩余計に歩いている」など
気づかない非効率を発見できます。

◎ 時間研究

作業にかかる時間を計測して、「この作業はどこで時間がかかっているのか?」を分析する手法です。
これにより、「何にどれだけ時間がかかっているのか」が見える化され
改善の優先順位もはっきりします。

■ 難しい言葉より、「まず見てみる」「数字で捉える」

IEの導入といっても、はじめは難しい分析は不要です。

  • まずは作業をじっと観察してみる(ビデオ撮影も効果的)
  • 作業のステップを書き出してみる(簡単な工程表でもOK)
  • ストップウォッチで作業時間を測ってみる
  • 作業後に「どこがやりづらかったか」を本人に聞いてみる

これだけでも、現場の「当たり前」に潜むムダやムラが、少しずつ見えてきます。

■ IEは中小製造業の「現場力」を強くする考え方

IEは、現場の人が主役になる考え方です。
「現場を見て・考えて・工夫する」この習慣が、結果的に生産性を上げ、働きやすさにもつながります。

次回は、実際にIEを使って「ムダを見える化」するための方法をご紹介します。
「IEって意外と身近なんだな」と思ってもらえたら、うれしいです。