
ビジネス研修や企業サポートの現場において、しばしば語られる言葉があります。
「モノを与えるのは一過性。モノの作り方を教えるのが教育であり、持続的成長につながる」
これは、いわば“魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ”という発想です。
その視点に立てば、企業研修やコンサルティングも、「改善の手法を教え、自ら考える力を育てる」
ことが本来のあるべき姿と言えるでしょう。
しかし――。
このアプローチがすべての企業にとっての最適解かというと、必ずしもそうではありません。
■ 教育型サポートのメリット・デメリット
◯ メリット
• 社員の思考力・自走力が高まる
• 長期的に見て、内製化・継続的改善につながる
• どんな課題にも応用できる“思考のフレーム”が残る
× デメリット
• 成果が出るまで時間がかかる
• 抽象的な内容だと、現場にピンとこないことが多い
• 特にリソースが限られた企業では「考える余裕すらない」ことがある
実際、ヒト・モノ・カネが潤沢な大企業であれば、教育型アプローチは機能しやすい。
一方で、中小企業では「理論より実務」「仕組みより現場のSOS」が優先される場面も多く存在します。
■ 問題解決型サポートのメリット・デメリット
◯ メリット
• 目の前の課題に即効性がある
• 具体的な成功事例を共有することで、すぐに実践可能
• 社内にノウハウが蓄積されやすい(成功体験の再現)
× デメリット
• 依存体質になりやすい
• 「なぜそれをやるのか」の理解が浅いと形骸化する
• 問題が変化した際に自力で対応しにくくなる
つまり、短期的な成果は出る一方で、「再発防止」や「自律的改善」にはつながりにくい
という側面があります。
■ 中小企業にとっての“最適解”は?
私たち「まちの総務」は、これまで多くの中小企業の現場に関わってきました。
その中で見えてきたこと――それは、
「教育型」と「問題解決型」のどちらかではなく、“順番”と“バランス”が鍵になる
ということです。
実際、多くの中小企業が抱える課題は、既に他社で解決されている“再現性の高い悩み”であることが
少なくありません。
「あなたの困ったは、すでに誰かが解決しています」
――この事実を伝え、具体的な改善事例をそのまま適用することが最も効くという場面が多々あるのです。
■ 「まずは解決」から始めて「学び」を組み込む
ですから、中小企業支援においては、こう考えるのが現実的かもしれません。
✅ ステップ1:まずは“問題解決型”で具体的に助ける
✅ ステップ2:余裕が出てきたら“教育型”で再発防止・内製化を目指す
このように、「今、目の前で困っていることをすぐに解決する」ことが最優先であり
そこから徐々に学びの土壌を整えていく方が、企業にとっても現場にとっても自然な流れなのです。
■ サポートする側に求められる視点
サポートする側として、「教えるべきか、解決すべきか」と迷ったときは
ぜひこう問い直してみてください。
• 今この企業に“考える余裕”はあるのか?
• 現場で繰り返されている問題には共通項があるのか?
• 今すぐに成果が必要な局面ではないか?
その答えによって、教育と支援のバランスを柔軟に変えることが
結果として最も価値あるサポートになります。
■ まとめ:教えるだけでは足りない。寄り添って“解決”する価値
「教えるだけでは届かない」――
それは相手が悪いのではなく、今の状況に合った支援の形ではなかったというだけ。
だからこそ、「再現性の高い他社事例」「具体的なアドバイス」「即効性のある改善策」
が求められる現場では、まず問題解決型で寄り添うことが、本当の意味での“企業支援”なのだと思います。
「あなたの困ったはすでに解決している誰かがいます」
だからこそ、その知恵を共有することが、最大の価値になるのです。