職場では、明文化されていない「空気」や「暗黙の了解」が多く存在します。
それがうまく機能すれば、チームワークや信頼につながりますが、逆にそれが動きづらさや
ストレスの元になることも少なくありません。

「この人に話を通さないと進まない」
「あの部署とは関わらない方が無難」
「前例がないからやらない方がいい」

これらの“見えない壁”こそが、改善や挑戦を阻む【しがらみ】の正体です。

■ しがらみはどこから生まれるのか?

  1. 上下関係・立場による心理的制約
    • 「部長の機嫌を損ねないように」
    • 「若手の自分が意見するのは僭越かも」

→ 言いたいことを言えず、結局“現状維持”が優先される

  1. 組織間・部署間の力学と縄張り
    • 部署ごとにルールや文化が違う
    • 他部門のやり方に口を出すと「越権行為」扱いされる

→ 横の連携が進まず、無駄な確認や調整に追われる

  1. 同調圧力と「前例主義」
    • 「うちはずっとこうやってきたから」
    • 「目立つと損するよ」という空気

→ 新しい提案や改善案が浮かびづらくなる

■ 自分でできる「しがらみ」への対処法

  1. 「関係の棚卸し」で無駄なつながりを減らす
    • 定期的に関係性を見直し、「付き合い続ける必要のない関係」を見極める
    • 「この会議、本当に自分が出る必要ある?」と疑ってみる
  2. 個別での対話力を高める
    • 会議よりも“1対1”で本音を引き出す
    • 対立ではなく、理解から入る姿勢を意識する
  3. 小さな成果を味方にする
    • 「実績」という共通言語が、しがらみを超える説得力になる
    • まずは影響範囲の小さい改善から始めて、信頼を積み上げる

■ 第三者の力が必要な「しがらみ」構造の突破法

しがらみは多くの場合、「個人の努力では超えられない構造的問題」に根ざしています。

● 組織文化の可視化と診断
• 外部ファシリテーターによるヒアリング・分析を通じて、「沈黙のルール」を言語化
• 組織の“空気”を主観でなくデータで把握する

● 組織横断型の改善チーム設置
• 部署を越えたメンバーで構成された「横串チーム」により、しがらみに風穴を開ける
• 本業とは別の「越境活動」を通じて、関係性のリセットを図る

● メンタル・ハラスメントの早期対処
• 「あの人の目が怖い」「何を言っても否定される」などの声には、心理的ケアや専門対応を
• 社内相談窓口や外部窓口の整備・周知も重要

■ しがらみは、悪ではない。けれど、時に変えねばならない

しがらみとは「信頼」や「歴史」から生まれる側面もあります。
完全に断ち切るべきものではありません。
しかしそれが、“声を上げづらい”“前に進めない”理由になっているならば、
私たちはそれと向き合い、時に揺さぶりをかける必要があります。

自分が変わる、関係が変わる、組織が少しずつ変わる。
その始まりは、たった一人が「それ、おかしくないですか?」と口にすることかもしれません。