中小企業向けの企業研修講師を務める中で、参加者の皆さんには、ある一定の法則、いわば共通項が
あることに気づきます。今回は、その点について噛み砕いて解説してみたいと思います。

デジタル研修で浮かび上がる二つの課題

私自身の研修分野は、主にITを中心としたデジタル課題やDXなどの変革研修です。
やや小難しく感じられがちな分野ではありますが、参加者の声を整理していくと

多くの場合
「手段の目的化」「課題を深掘りできていない点」に行き着きます。

問題点は出るが、対応策が浅い現実

研修でよく行う演習に、「自社や自身の問題点を整理し、課題を明確にしたうえで対応策を考えましょう」
というものがあります。日々の業務を遂行する中では、さまざまな問題や課題が発生します。

「ヒト・モノ・カネ」と新たな壁

一般的には「ヒト・モノ・カネ」が代表的ですが、最近ではこれらに加えて「技術習得」も重要な要素と
して挙げられるようになりました。

免罪符のように使われる「デジタル人材不足」

「ヒト・モノ・カネ」であれば、過去の経験からある程度の方向性を見出すことができます。
その中で、よく耳にするのが「デジタル技術者不足」という言葉です。
分かったようでいて、実はこれを口にすれば免罪符になるかのような、少し危うい表現でもあります。

思い込みが生む「システム化万能論」

実態としては、人材育成が追いついていないこと、そして社内にデジタル人材がほとんど存在しないケース
が大半です。多くの方の心の中には、「自分はデジタルが苦手だが、現状を打破するにはシステム化しかない」
という思い込みが根付いています。

演習で露呈する「手段の目的化」

ここで、冒頭に触れた演習に話を戻します。参加者は各自、あるいは各社の問題点や課題を洗い出します。
これ自体は驚くほど多く挙がります。
しかし、その対応策になると「システム導入」といった安直な案しか出てこないのが現状です。

分析を飛ばした短絡的なデジタル化

これこそが、いわゆる「手段の目的化」です。
本来必要な分析や課題整理を飛ばし、「デジタル化すればすべて解決する」という短絡的な思考に陥ってしまいます。

デジタル化は手段であって目的ではない

デジタル化は、あくまでも手段にすぎません。
その結果として何ができるのか、何ができないのか。
費用対効果、工数、対応できる人材などを十分に検討する必要があります。

なぜ提案は通らず、失敗が繰り返されるのか

これらを十分に検討しないまま「デジタル化」という言葉で一括りにして経営層や上長に報告してしまうと
提案はどうしても曖昧になります。
その結果、却下されるか、予算が通っても失敗に終わるケースが少なくありません。

繰り返される失敗と次回への示唆

中小企業、特に製造業では、こうした失敗を何度も繰り返しているというのが
私自身の経験から学んだ現実です。

問題提起だけで終わらせず
次回は一定の方向性と具体的な方策について整理していきたいと思います。