
~小さく始めて、現場が変わる。その第一歩をあなたから~
全5回でお届けしてきた「IEで始める現場改善シリーズ」。
最終回の今回は、実際にIE的な考え方を取り入れて改善に成功した中小製造業の事例
をご紹介しながら、
「どこから始めればよいか」「誰がやるのか」「どうやって続けるのか」について、具体的に解説します。
■ IEは「難しい理論」ではなく「地道な工夫」の集まり
IE(インダストリアル・エンジニアリング)と聞くと、「大企業の話でしょ?」と思われがちですが、
実際には現場で“ムダをなくす”ための道具箱のようなもの。
中小企業だからこそ、少ない人数・時間で成果を出すためにIEが役立つのです。
■ 成功事例:社員15人の町工場が「見える化」で大変身
▶ 会社プロフィール
- 業種:金属部品の加工・組立
- 従業員:15名(社長含む)
- 課題:
- 毎日納期に追われてバタバタ
- どこが遅れているのか把握できない
- 作業のやり方が人によってバラバラ
▶ 1. どこから始めた? ー「見える化」と「観察」から
まず取り組んだのは、「どこにムダがあるか」を見つけること。
特別なシステムは使わず、紙とペンとストップウォッチで現場を観察。
- 1日の中で「探す」「待つ」「移動する」動作にかかる時間を計測
- 作業工程をホワイトボードに簡単な図で書き出し、「見える化」
- 作業者が感じている“やりにくさ”をヒアリング
この時点では「IE」なんて言葉は一切使っていません。
ただ、“目で見て、話して、記録する”を繰り返しただけです。
▶ 2. 誰がやった? ー 現場の中堅社員+社長がペアで実行
IEの専門家がいたわけではなく、「一番現場を知っている中堅社員」と、
「変えたいと考えていた社長」がペアになって進めました。
- 中堅社員が「現場の本音・実情」を伝える
- 社長が「数字や経営視点」で方向性を示す
- 若手社員も巻き込み、「みんなで変えていく空気づくり」
▶ 3. 何を変えた? ― 小さなことばかり。でも効果は大きい
【改善1】よく使う工具を「吊るす」収納に → 探す時間ゼロに
【改善2】作業順をカラーで表示 → 新人でもすぐわかる
【改善3】ホワイトボードで1日の予定を共有 → 声かけ・確認が激減
これらはすべてコストゼロでできた改善です。
それでも、作業時間が15〜20%短縮され、残業時間も減りました。
■ 続けるための工夫 ―「完璧を目指さないこと」
この会社が改善を継続できた理由は
ズバリ:「100点を目指さず、60点でいいから行動する」
という考え方でした。
● 続けるためのコツ
- 月1回だけ「改善ミーティング」開催(30分)
- 「1人1改善」ルール(小さなことでOK)
- 成功例は、写真で壁に貼って共有
- 社長が「ありがとう」と毎回声をかける
👉 制度や仕組みで縛るより、雰囲気と習慣で根づかせることが大切です。
■ IE導入を始める3つのステップ(まとめ)
これからIE的改善に取り組む方に向けて、シンプルな3ステップをご紹介します:
【ステップ1】“見る”から始める(現場観察)
→ 動作、移動、待ち時間などに目を向ける
【ステップ2】“数える”クセをつける(簡単な記録)
→ サイクルタイム、個数、時間など、ざっくりでOK
【ステップ3】“話す”習慣をつける(改善の共有)
→ うまくいったことも、失敗もみんなで共有する場をつくる
■ 最後に:IEは「特別なこと」じゃない
IEと聞くと、専門的・理論的で難しく感じるかもしれませんが、
本質は「現場をよく観察し、小さな工夫を積み重ねること」。
中小企業だからこそ、現場の声が経営に届きやすく、スピード感を持って動けます。
小さな改善が、やがて“文化”として根づくと、会社全体が変わっていきます。
あなたの会社でも、今日から小さく始めてみませんか?