最近、非常に興味深いニュースが報じられました。
オーストラリアで「16歳未満のSNS利用を禁止する法律」が施行され
開始まで10日を切ったというものです(CNN報道)。

背景には、SNS利用に起因する青少年の犯罪被害、オンライン誘導、サイバーセキュリティ上のリスク
などが存在します。オーストラリア政府はこうしたリスクを深刻に受け止め、思い切った規制に踏み
切ったと言えます。

■ 罰則は誰に向けられるのか?

新法では、テック企業は未成年者がSNSを利用できないようにする「合理的な措置」を講じなければ
ならず、怠った場合、最大約5000万オーストラリアドル(約50億円)の罰金が科せられる。対象
となる未成年者や保護者への罰則はない。

■ 世界が議論する中、規制には賛否が割れる

SNS規制は世界的に議論が分かれるテーマです。
新しい文化(=デジタルプラットフォーム)の普及速度があまりに速いため、各国の制度整備が後追い
になっているのは事実です。ただし、社会が手探りであることもまた変わりません。

規制を強化すれば安全性は高まる一方で、
• 過度な政府介入ではないか?
• 表現の自由の侵害にならないか?
• 規制された層が「アングラ」へ潜り逆に危険が増すのではないか?

といった別の懸念も生まれます。

■ 影響を受けるのは閲覧者だけではない

SNSといえば被害に遭うのは「閲覧者」と思われがちですが、発信側にも大きな影響があります。
特に16歳未満のインフルエンサーなどは、フォロワーが多ければ収益が発生している可能性が高く
利用禁止は生活に直結する問題になります。一度離れたフォロワーを取り戻すのは容易ではありません。

■ 規制すれば地下化するのも必然

規制が強まれば、回避しようとする動きも生まれます。VPN利用や年齢偽装など、いくらでも抜け道は
存在します。これは規制側と事業者側の“いたちごっこ”になりやすく、効果的な落とし所を探る必要が
あります。

■ では、日本はどうすべきか?

今回のオーストラリアの動きは、世界に向けて大きな問題提起となりました。しかし、日本では同様の
議論が本格化する気配はあまりありません。

▼ 日本で議論が進みにくい理由
• SNSがすでに生活インフラ化している
• 16歳という線引きの妥当性が不明確
• 規制対象のSNSをどう定義するかが難しい
• インフルエンサー文化への影響が大きい
• 「大人の利用は問題ないのか?」という論点も解決していない
• 利用制限よりも啓発や教育を重視する風土

これらが複雑に絡み、日本では「規制論」が多数派の反対意見によって議論にすら乗りにくい構造が
あります。

■ 日本が目指すべき方向性

では、私たちが検討すべき“落とし所”はどこなのか。
日本が探索すべき方向としては、以下の3点が現実的です。

  1. 現状を静観しつつ海外の動向を注視する

オーストラリアの試みは大規模かつ先進的な実験です。
成果や問題点が明らかになるまでは、日本も慎重に様子を見つつ分析する価値があります。

  1. 一定の対策は必要

完全な禁止ではなく、
• 年齢確認の強化
• 親の同意プロセスの透明化
• SNSリテラシー教育の義務化
など、段階的かつ実効的な施策は導入可能です。

  1. 線引きの明確化

「年齢」「利用目的」「リスクの種類」などについて、社会的な合意形成を図る必要があります。
特に日本は“曖昧なまま運用”されるケースが多く、明確な基準を作らないことで逆にトラブルが起き
やすい側面があります。

■ 最後に:オーストラリアの挑戦は、世界の未来を映す鏡

オーストラリアの16歳未満SNS禁止は、大胆な規制でありながら、社会として“子どもを守る”という
明確な意思表示でもあります。

この取り組みが成功するのか、問題を生むのか。
いずれにしても、この法律は世界の議論に大きな影響を与えるはずです。

そして日本もまた、この問題から目を背けることはできません。
技術の進化と社会の安全のバランスをどのように取るか
その答えを探るために、今後のオーストラリアの動向からは目が離せません。