
■ 動いているのに、前に進まない
どの職場にもあります。
「毎日忙しいのに、何か進んでいない気がする」
「一生懸命やっても、結局決まらない、変わらない」
現場は動いている。上司も頑張っている。
それなのに、会社全体としての方向性が見えない。
そんな状態を「誰もハンドルを握っていない組織」と呼びます。
■ 「操縦不能な組織文化」とは何か
操縦不能な組織とは、個人ではなく組織全体がハンドルを失っている状態のこと。
特徴として、次のような兆候が見られます。
• 意思決定が遅く、誰が最終責任者か分からない
• 方針が頻繁に変わり、現場が右往左往
• 現場の意見が届かず、上層部の判断が現実離れ
• 「前例がない」「上が決めるまで動けない」が常態化
つまり、会社全体が“自動運転”のようで、どこへ向かっているか誰も分からない状態。
これこそ、サラリーマンにとって最もストレスの多い“組織的ハンドリング不全”です。
■ 個人の頑張りが報われない構造
この文化の厄介な点は、
個人の努力が組織の方向と同期していないこと。
社員は真面目に頑張っているのに、
組織の判断が遅れたり方針が曖昧だったりして、成果に繋がらない。
「自分でハンドルを握れない忙しさ」
のときと同じように、
今回は“組織全体がハンドルを握れていない”ために、
社員一人ひとりが「やり損」や「むなしさ」を感じてしまうのです。
■ なぜ、操縦不能な文化が生まれるのか
その背景には、いくつかの典型的な要因があります。
1. 過度な“忖度文化”
上司の顔色ばかり伺い、現場の判断力が麻痺する。
2. 責任の“分散構造”
誰も明確に意思決定しないため、全員が「様子見」になる。
3. 変化を恐れる“安定志向”
「前例踏襲」こそが安全という意識が染みつき、改革が止まる。
4. 評価制度の歪み
“波風を立てない人”が高評価を受け、挑戦する人ほど浮く。
こうして、
「誰もハンドルを握らない方が安全」という“消極的安定”の文化が形成されていくのです。
■ 「上司が悪い」ではなく、「構造の問題」
現場の社員は「上が動かない」と嘆き、
管理職は「部下が動かない」とため息をつく。
しかしこの問題は、個人の資質ではなく構造的な歪みです。
ハンドルが一部に集中しすぎると、
他のメンバーは“乗客”になってしまう。
逆に、全員が自分勝手にハンドルを握ろうとすれば、
車は蛇行して前に進まない。
本来あるべきは、
「誰か一人が握るハンドル」ではなく、
「組織全体で握る方向感」なのです。
■ まちの総務的提言:「ハンドルの共有」文化を育てよう
まちの総務として現場支援をしていて感じるのは、
“方向を共有できる組織”は、自然とエネルギーが前に進むということです。
以下の3つを実践している組織は、操縦不能に陥りにくい傾向があります。
1. 目的を「現場の言葉」で共有する
経営理念やスローガンではなく、
現場が理解できる“日々の行動指針”に落とし込む。
2. 決定プロセスを透明化する
誰が、何を基準に決めたのかを明確にする。
これだけで現場の納得感が大きく変わります。
3. 「報告・相談」より「提案・選択」へ
現場が“選べる”余地を与えることで、ハンドルを一部戻す。
■ まとめ:「ハンドルを共有する組織」が強い
「操縦不能な組織文化」は、一見“安定している”ようで、実は停滞の始まりです。
忙しくても進まない、頑張っても報われない、そんな会社は
社員がハンドルを離してしまった結果なのかもしれません。
組織の本当の強さは、上司が握るハンドルの力ではなく
みんなで進む方向を共有できるかどうか。
“まちの総務”として現場に寄り添う立場から見ても、
これこそが、次の時代に求められる「しなやかな組織運転術」だと感じます。
