まちの総務として、人材分野にも強い関心を持ち、お客様へのサポートも行っております。
国内では深刻な労働力不足が続き、その補完として外国人労働者への期待が高まっています。
しかし、その背景には過去から続くさまざまな課題があり、現在も多様な問題が噴出しています。

制度面や就労ビザに関する仕組みは非常に複雑で、正直なところ私自身も十分に理解しきれていない
部分があります。そのため、まずは私が把握している範囲で整理し、解説を交えながら文章として
まとめてみたいと思います。
以下の3回シリーズで分けて整理しながら解説します。

📘シリーズ構成

【第1回】「止まらない労働力不足と技能実習生制度の現実」
▶ 現在の労働市場における人手不足の実情
▶ 技能実習制度とは何か(制度の目的・構造)
▶ 現状の課題・問題点(人権問題・制度の限界・形骸化)

【第2回】「外国人就労ビザの仕組みを知る」
▶ 特定技能ビザの創設背景と特徴
▶ 技能実習制度との違い
▶ 技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザとの比較
▶ 受け入れ企業・外国人双方のメリット・デメリット

【第3回】「外国人と共に働く社会へ」
▶ 単一民族国家・島国としての課題
▶ 外国人目線から見た“働く日本”の評価とギャップ
▶ 共生社会実現に向けた方向性(企業・行政・地域・教育の視点)
▶ “多様性”を日本の強みに変えるために

【第1回 】「止まらない労働力不足と技能実習生制度の現実」

■ はじめに

いま、日本社会が抱える大きな課題のひとつに「労働力不足」があります。
少子高齢化が加速する中、国内の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少し続け
特に地方の中小製造業や第一次産業では深刻な人手不足が日常化しています。
コンビニ・介護・建設・製造・農業など、かつては“日本人の働く現場”であった職場も
今や外国人なしには成り立たない状況です。

■ 技能実習制度とは

「技能実習制度」とは、1993年に導入された制度で、発展途上国の若者に日本の技術や知識を
学んでもらい、自国の発展に役立てることを目的としています。
制度上は“国際貢献”が主旨ですが、実態としては人手不足を補うための労働力確保手段として
機能してきました。

技能実習生は、監理団体を通じて受け入れ企業で働きながら、日本語や技能を学び
最長5年間滞在することができます。
主な対象業種は、製造業・建設業・農業・介護・食品加工など、いわゆる“現場職”が中心です。

■ 制度の問題点と批判

しかし、この制度は長年にわたり多くの問題を抱えてきました。
代表的なものを挙げると

1. 低賃金・長時間労働
 実習という名目で労働者としての権利が十分に守られず、最低賃金ぎりぎり
あるいは違法な残業が横行するケースもあります。
2. 人権侵害・劣悪な環境
 パスポートを取り上げられる、転職を制限される、寮の環境が劣悪など
国際的にも問題視される事例が報告されています。
3. 制度の形骸化
 本来の「技能移転による国際貢献」という目的が形だけとなり
実態は「安価な労働力確保手段」となっているという批判も根強いです。
4. 監理団体・受け入れ企業のモラル問題
 不正監理や中間搾取構造が温床となり、制度そのものへの信頼が失われつつあります。

■ 政府による見直しの動き

こうした問題を受け、政府は制度改革を進めています。
2023年には有識者会議の提言として、技能実習制度を廃止し「育成就労制度(仮称)」
移行する方向が示されました。
新制度では、転職制限の緩和や、より実質的なキャリア形成支援が目指されています。

■ 労働力確保と国際貢献の狭間で

技能実習制度は、日本の労働現場を支えてきた一方で、その歪みも浮き彫りにしました。
“労働力としての外国人”“学ぶ立場としての実習生”この二重構造こそが
長年の混乱の根源とも言えるでしょう。

■ まとめ

• 日本は構造的な労働力不足に直面している
• 技能実習制度は“国際貢献”を目的としつつ、実態は“労働力確保”の手段化
• 多くの人権・制度的課題が浮上し、見直しが進行中
• 次のステージとして「特定技能」など新しい枠組みが動き出している

次回は、この問題に代わる新たな制度として注目される
「特定技能ビザ」や「技人国ビザ」など、日本で働くための具体的なビザ制度を解説します。