前回の記事でお伝えしたとおり、
2025年10月14日でWindows 10のサポートが終了 します。
その影響もあり、今の時期は多くの企業で「Windows 11への移行」や「OSアップデート」の準備が進んでいます。

ところが最近、企業のIT担当者から次のような声が増えてきています。

「Windows 11にしたら、急にNAS(ファイルサーバー)にアクセスできなくなった」
「昨日まで普通に開けていた共有フォルダが見えない」
「何も設定を変えていないのに、なぜ?」

こうした昨日までできたのに、急にできなくなったという問い合わせは、実は多くの企業で共通して起きています。

■ 原因は「セキュリティの強化」と「ユーザー管理の厳格化」

この現象の多くは、Windows 11そのものの不具合ではなく、新しいセキュリティ基準が導入されたことによる仕様変更 に起因しています。

これまでのWindows 10までは、社内の共有設定やNAS(ネットワークHDD)に対して「匿名アクセス(パスワードなし)」や「古いプロトコル(SMB1.0)」など、比較的緩い条件でも接続できる状態が許されていました。

しかし、Windows 11ではこのあたりのルールが一気に厳格化され、
「ユーザー認証」や「暗号化通信」が必須になっています。結果として、これまで“なんとなく動いていた環境”が、急に動かなくなるケースが続出しているのです。

■ “不具合”ではなく“設計変更”と理解する

「昨日まで使えていたのに!」という心理的なショックは理解できますが、今回の現象は“バグ”ではなく、“安全性を高めるための設計変更”です。つまり、OSが「危険な通信を止めてくれた」とも言えます。

このため、「以前の状態に戻す」設定変更(たとえば匿名アクセスを許可するなど)は、一時的に解決しても、長期的にはセキュリティ上おすすめできません。

特に外部ネットワークやクラウドと接続している環境では、古い設定のまま運用を続けることがリスクにつながる可能性もあります。

■ 対応の方向性:焦らず、段階的に見直す

もしNASや共有フォルダに接続できなくなった場合は、以下のような手順で冷静に対応することをおすすめします。

  1. NAS側のアクセス権限やSMB設定を確認する
     → 古いNAS機器では、Windows 11の新しい認証方式に対応していない場合があります。
      メーカーの公式サイトでファームウェアアップデート情報を確認しましょう。
  2. Windows側で“資格情報マネージャー”を使い、正しいユーザー名とパスワードを登録する
     → 従来は省略できていた認証が、今後は必須になります。
  3. 社内共有ルールを見直す
     → 「誰でも開ける共有フォルダ」から、「部署・担当者単位のアクセス制限」へと
      移行する良いタイミングでもあります。

■ ネット上にも多くの事例が

このNAS接続問題は、すでに多くのユーザーや企業が直面しており、ネット上には詳細な対処法や検証記事も数多く投稿されています。

「Windows11 NAS 接続できない」「SMB設定」「資格情報マネージャー」などで検索すれば、メーカーごとの具体的な手順も見つけられるでしょう。

ただし、ネット情報の中には「一時的に安全性を下げる」ような設定変更も含まれているため、内容を理解した上で慎重に対応することが大切 です。

■ まとめ:移行は“試運転”のつもりで

Windows 11への移行は、単にOSを新しくするだけではなく、社内システム全体の“安全設計”を見直す機会 でもあります。

今後は、NASだけでなくプリンター、VPN、業務アプリなど、「OS更新を機に動かなくなった」事例は他にも出てくるでしょう。

だからこそ、すぐに「不具合だ」と決めつけず、「設計が変わった」「安全性を高める方向に進化した」と理解し、計画的に環境を整えていくことが重要です。

Windows 10サポート終了のカウントダウンが始まる中、焦らず、慌てず、現場の声を共有しながら前に進んでいきましょう。