「現場がとにかく忙しくて、改善に取り組む余裕がないんです」

この言葉、製造業を中心とした多くの中小企業から非常によく聞かれるフレーズです。
業務改善やデジタル化の相談を受ける中で、最初に出てくるのがこの悩みだと言っても過言ではありません。

確かに現場は逼迫しており、受注対応に追われ、人員も設備もフル稼働。そこに「改善をしろ」と
言っても、現実問題として無理だと感じるのは当然です。

しかし、その「忙しすぎて改善できない」という言葉に、思考停止のサインが隠れていることもまた事実です。

■「忙しい」は改善できない理由ではない

「忙しい」という言葉は、便利な言い訳にもなり得ます。
言い換えれば、「今は無理だから後回し」という判断が、ずっと繰り返されてしまう状態です。

私が関わったある現場でも、
「とにかく人が足りません」「落ち着いたらやります」という声が挙がる一方で、
よく観察してみると「非効率な作業」や「目的が不明確な作業」が散見されました。

つまり、本当に手を付ける余裕がないわけではなく、
どこに手を付ければ効果的かがわからないために、現場全体がフリーズしていたのです。

■「忙しさ」を分解してみる

そもそも、「忙しい」とは何を指しているのでしょうか?

  • 純粋に作業が多い?
  • イレギュラー対応が頻発している?
  • トラブル対応に追われている?
  • 誰かのミスを他の誰かがカバーしている?

これらを整理せずに「とにかく忙しい」とひとくくりにしてしまうと、具体的な改善策が
立てられなくなります。

まずは、忙しさの“中身”を見える化することが大切です。
これだけでも、思考が整理され、改善の糸口が見え始めます。

■「改善できない現場」は存在しない

「うちの現場は特殊だから」「人がいないから仕方がない」
これもよく聞くセリフです。

ですが、私はこれまで何度も、「忙しいけど、やれば変わる現場」を見てきました。
その違いは、「やれるかどうか」ではなく、「やろうとする意志があるかどうか」にあります。

そして多くの場合、改善のヒントは外部の視点にあります。
「まちの総務」として企業支援をしていると、現場の皆さんが“慣れて見過ごしているムダ”を
第三者の立場から指摘できることが少なくありません。

■まずは「考える時間」を確保することから

「とにかく時間がない」と感じているなら、まずは10分でもいいので
改善を考える時間を確保することから始めてみてください。

この“たった10分”が、忙しさのスパイラルから抜け出す第一歩になります。

現場が本当に回らなくなる前に、
「今の業務は本当に最適か?」「やめられる作業はないか?」
そう自問する時間を持つだけでも、大きな変化につながります。

■次回予告:「忙しさ」の中に潜む改善のヒントとは?

次回は、実際の現場でよく見られる「忙しさの正体」と、
そこに隠された改善のヒントについて掘り下げていきます。

  • 「人が足りない」ではなく「無駄が多い」?
  • 「品質ロス」や「段取りの悪さ」が見落とされている?
  • 現場の声をどう活かすか?

こうした視点から、「改善に取り組めない」状況を少しずつ変えていく方法をご紹介します。
どうぞお楽しみに。